爽やか王子の裏側は
はぁはぁ…
学校から家まで猛烈ダッシュしてきたから息が上がっている
い、戒めだなこれは
息を整えながら高さの低い家に入る
ここが我が家
随分前からあるのか作りが古臭く、全体的に小さい
だいぶボロボロになっている屋根がわかりやすい
「ただいまー」
「おかえりっ!華乃ねぇちゃん!」
ドタドタと足音を立てながら走ってくる
「ただいま柑奈」
柑奈はまだ幼稚園の妹
あと
「おかえり」
「ただいま快斗」
一つ下の弟、快斗
基本私たちは3人で暮らしている
お父さんは柑奈が生まれてすぐ、病気で亡くなった
お母さんはそれから一日中休む間もなく働いてくれている
そんなお母さんには感謝しかないけど、西村家の生活は苦しい
パソコンなどの機械類はほぼない
エアコンはないけど灯油ストーブならある
令和の世の中とは思えないほどの生活をしている
でも不満なんてない。
お母さんがいて、家があって、柑奈と快斗がいる
それだけで十分だ
お母さんはよく長期出張に出かけるため、家に帰ってくることがなかなかない
私は長女として柑奈と快斗を守ってあげなくちゃならない
そりゃ大変だけど、慣れれば大丈夫
「姉ちゃんご飯作っといたから食べよ」
快斗だって手伝ってくれてるしね
「ありがとう!じゃ、手洗ってくるから待っててね」
「お腹すいたからはやくぅ!」
「はいはい」
騒がしい毎日は全然嫌いじゃない