爽やか王子の裏側は



「西村華乃」


!!


ピアノの前で一人頭を抱えていると名前を呼ばれて肩が上がった





「は、長谷川先生」


白衣を着た長谷川さんが音楽室の入り口にもたれかかっていた


「昨日珍しく大翔の方から会いにきたんだよ」





「旧校舎の音楽室って使ってる?って聞いてきてさ、どうせ使ってないんだろうから西村華乃に弾かせてやってって」


長谷川くん…


「…あいつ、なんか変なことした?」


へ?


「さっきすれ違ったんだけどなんか…いつもと違うっていうか」


さすが兄弟



「いえ…ちょっと、どうやら触れちゃいけない話に触れちゃったみたいで」


「…ああ、もしかして陸上のことについて触れた?」


え、陸上?


「違った?じゃあ園川真一くんかな」



!!


「あ、そうみたい」





全部読まれてる


「そうだね…あの二人は色々あったからね」


色々…


「あの二人は同じ中学で…」





「あの」


「ん、なに?」


それは…

長谷川先生の口から聞いていいのかな


「あの…それ以上は本人達が話したくないといけないので」


園川くんの愛想笑い

長谷川くんの無表情


その裏に隠された真実がどんなものかは知らないけど

私が土足で踏み込んでいい場所ではない


「そっか…西村はいい子だね」





長谷川先生が思ったよりも柔らかく笑ったので心臓が踊った


「俺さ、偶然には思えないんだよね」


…え、何の話?


「園川真一くんと、大翔の前に君が現れたこと」


それは…


「俺はあの2人に前のような関係に戻ってほしいんだよ」


前のような関係…とは


「君のご要望だから言わないけど、西村ならあの2人を救えるかなーなんて、ちょっと大げさかな」


救う…



< 110 / 292 >

この作品をシェア

pagetop