爽やか王子の裏側は
「西村華乃」
!!
ピアノの前で一人頭を抱えていると名前を呼ばれて肩が上がった
え
「は、長谷川先生」
白衣を着た長谷川さんが音楽室の入り口にもたれかかっていた
「昨日珍しく大翔の方から会いにきたんだよ」
!
「旧校舎の音楽室って使ってる?って聞いてきてさ、どうせ使ってないんだろうから西村華乃に弾かせてやってって」
長谷川くん…
「…あいつ、なんか変なことした?」
へ?
「さっきすれ違ったんだけどなんか…いつもと違うっていうか」
さすが兄弟
「いえ…ちょっと、どうやら触れちゃいけない話に触れちゃったみたいで」
「…ああ、もしかして陸上のことについて触れた?」
え、陸上?
「違った?じゃあ園川真一くんかな」
!!
「あ、そうみたい」
ぬ
全部読まれてる
「そうだね…あの二人は色々あったからね」
色々…
「あの二人は同じ中学で…」
!
「あの」
「ん、なに?」
それは…
長谷川先生の口から聞いていいのかな
「あの…それ以上は本人達が話したくないといけないので」
園川くんの愛想笑い
長谷川くんの無表情
その裏に隠された真実がどんなものかは知らないけど
私が土足で踏み込んでいい場所ではない
「そっか…西村はいい子だね」
!
長谷川先生が思ったよりも柔らかく笑ったので心臓が踊った
「俺さ、偶然には思えないんだよね」
…え、何の話?
「園川真一くんと、大翔の前に君が現れたこと」
それは…
「俺はあの2人に前のような関係に戻ってほしいんだよ」
前のような関係…とは
「君のご要望だから言わないけど、西村ならあの2人を救えるかなーなんて、ちょっと大げさかな」
救う…