爽やか王子の裏側は



今でも覚えてる


思わず目を瞑るくらい、強く、痛々しく


地面に叩きつけられた大翔


その場から動かなくなった大翔に駆け寄る先生たち


俺は動けなかった


俺の見ているところまで聞こえたハードルにぶつかった骨の鈍い音


先生が救急車を呼んで大翔は運ばれていった



右足骨折


2ヶ月後に迫っていた大会には出られなくなった





なんで


なんであの時手をつかなかったんだよ


なんで守らなかったんだよ、足を


病院に駆けつけた俺はその場で大翔に怒鳴った



「お前何考えてんだよ!」


「…」


「なんで手つかなかったんだよ!意識しろよ!お前大会の選手なんだろ!もっと自覚持てよ!」


「意識したよ…意識したからこうなったんだ」


「は?何言ってんだよ、意識したらもっとマシな転がり方出来ただろ?」


「…指を守ったんだ」


「…指?なんでだよ…なんで指なんか」



それ以上は教えてくれなかった


何度聞いても黙りこくったまま



あの時、大翔が指を守った理由は今でもわからない


2ヶ月後の大会に出られなくなった大翔は



骨折してから1週間後



部活をやめた



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