爽やか王子の裏側は



「…面白くないなぁ」





ボソリと何かが聞こえて振り向くと


「わ」


思ったよりも近くにあった長谷川くんの顔に後退りした


「な、なに?」


「んー…西村華乃はさ、俺とか兄貴みたいに感情が表に出ない人ってかっこいいと思う?」


な、何を自分で言っているんだ


「いつも何考えてるかわかんないって言われるんだよね」


あーそれは確かに


でもそれは長谷川くんをよく知らなかった時の話


「確かに第一印象は何考えてるかわからない気難しい子だなって思ってたよ」


長谷川くんがチラリと私を見た


「でもそれは第一印象に過ぎないから。長谷川くんをよく知らなかった時の話」


「?」


「今は長谷川くんのことよく知ってるつもりだからそうは思わないかな。ちょっと表現は下手くそかもしれないけどあんなに優しい笑い方するんだし

私は表情の硬い長谷川くんよりも今みたいに
私をわたがしって言うような長谷川くんの方が好きだよ」


わたがしを思い出してふふっと笑って見せた


切れ長の目を少し大きくした長谷川くん


「…」





固まってしまった


最近よく見る光景


「長谷川くん?」


「…あー…まじ?」


ん?


「まじか…」


え、どうしたんだ


「な、何がまじなの?」


「いや…こっちの話…ちょっと厄介なことを自覚しちゃったなって」


厄介な?


自覚?


どういうこと?



「西村華乃はまだ知らなくていいこと」


え、なにそれ気になる


「そか…西村華乃は今の俺の方が好きなんだ」


「す、好きって言ってもあれですよ!あの前よりはっていうか」


「わかってるよ。今は、ね?」



今は?


何を言ってるんじゃこの人は





結局そのことは教えてもらえず昼休みは終わってしまった



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