爽やか王子の裏側は
「…何?」
…え…なんだろ
なんで止めたんだっけ
この焦りは
昼休みの焦りと同じ感じ
いや、それよりももっと確かなもの
西村を好きだと言った大翔に沸く、確かな…あんまりいいものではない感情
西村の
優しくて柔らかい笑った顔も
ピアノを弾いてる時のいつもと違う雰囲気も
細い腕や指も、白い肌も
黒い髪も長い睫毛も
その全部が、
その全部が…?
何?
「なんだよ真一」
「…西村に告るの?」
俺の質問に少しの笑いをこぼした大翔
「…まだ告らないよ。俺こう見えて慎重に行くタイプだから。確実に落としてから告る」
大翔の目はいつも通りやるせない感じの目
だけど確かに…そう決めたということは伝わる
「西村ってさ、結構無防備なんだよね」
は?
「俺マジだから」
…
それだけ言い捨てて音楽室から消えた
…
西村を、好き
大翔が…
なんだろ
なんでこんなにも
ムカつくんだろ