爽やか王子の裏側は



長谷川くんと園川くんと別れて校門へ向かう


2人は陸部の顧問のところに行ったらしい


長谷川くん部活入るのかなー


雨で湿った廊下を1人歩きながらそんなことを考える



「えー!うっそ!まじで!?」


ん?


玄関のところで数人の女の子の声が聞こえた


何の話してるんだろ


「園川くんのハチマキ欲しかったぁ泣」


園川くん?


唐突に馴染んだ名前が聞こえて反応する



「それまじなの?」


「まじだって!私聞いたもん!ハチマキちょうだいって言ったらもう交換の約束してる人いるって」


!!


ハチマキ


交換の約束…?


「頼まれたの?って聞いたら自分からっていうから何も言えなくなっちゃって」


…自分から?


それは…園川くんが自分から交換してって言ったってこと…?


平然と靴を変えているように見せかけてめちゃめちゃ聞き耳を立てる


「ええーショックぅー!好きな人いるってこと?」


「あるいは彼女でしょ?」





「まあ園川くんのハチマキは諦めるしかないのか」






そっか


いるんだ…渡す人



いや、何言ってんの私



もらえるとでも思ってたわけ?



私は偶然園川くんの本性を知ってしまって…

偶然ピアノを聴かせて、偶然認識してもらったにすぎない


私は…彼にとってただ自分の本当を知っているから監視していないといけない存在でしかない



…それ以上でも以下でもない


何を期待してたんだろう



馬鹿みたいだ




だったらなんでこんなにも…


モヤモヤが消えてくれないのか





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