爽やか王子の裏側は



ガチャ


パチパチ


「ブラボー」


園川くんがいたら、なお。



「園川くん。聴いてたんだ」


「そりゃもちろん。今日のストレスは過去1だから」


とほほ


「大変だったね」


ハチマキ事件ね


「あれから大翔になんか言われたりした?」


『俺、西村華乃のハチマキが欲しい』


脳内リピートされる長谷川くんの言葉


「なんか言われたっぽいね」


私の反応をみて息を吐く


なぜわかる


「あいつ本当何考えてんだろ」


本当ですよ


あなたのお友達謎すぎるよ


謎の共感をして鞄を床に置いた園川くんがピアノに近づいた



「さっきの曲、俺知ってるよ」





「エリーゼのために?」


「そうそれ、あれだろ?ダダダダーンの人とおんなじでしょ?」


ダダダダーン…運命かな?笑


「そう、ベートーベンね」


「その人その人」


「じゃあ今日はベートベンの曲を弾こうかな」



壮大な人生を歩んだベートーベンの優しい曲


最初の和音を響かせた


私の音に耳を傾けて目を瞑る園川くん


手を伸ばせば触れられる場所にいる



こんなこと…


本当だったらあり得ないんだ



私は運がいいだけ


運良く認識してもらえただけ



園川くんにはハチマキを渡す特別な人がいるんだ


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