爽やか王子の裏側は


あれから結局三曲くらい弾いて帰った


園川くんは私のピアノを本当に気持ちよさそうに聞いてくれた

癒しだって言ってくれるけど実際私もそんなようなものだ

あの時間が好き


まあもちろんその時間にハチマキのお相手を聞く余裕なんか到底なく…

あっさり帰ってしまったことにどっさり後悔

ちょっとブルーな気持ちで学校に入る



はぁ


下駄箱で靴を変えてため息をつく


「なんでため息ついてんの?」




「おはよう西村華乃」


「長谷川くん」


長谷川くんが私の後ろに立ち、上から顔を覗き込んでいた

思ったよりも距離が近い


「大丈夫?」


「うん」


「真一絡み?」


う…


「いや…その」


ハチマキが気になりすぎてるなんて言えない

あからさまに顔を背けた私の頭右上ら辺に
長谷川くんの手が置かれた


「ふーん…面白くないなぁ」


まただ


最近よく聞く言葉
なんなんだろう


「ねぇ長谷川くん、何が面白くないの?」


もう聞いてしまった

振り返って長谷川くんの顔を見る…


ん?待てよ


なんだこの体制

下駄箱で私のすぐ近くに立つ長谷川くんの手が私の行く先を塞ぐようにある


もしかして壁どーんってやつ?


いや、違うか?だって下駄箱だし


ん?(西村華乃には左様な知識がない)



「…んー…西村華乃の中が」


下駄箱についてない方の手で私の胸元を指差す


「真一でいっぱいだから面白くない」


…ほ?


それはどういう意味で…


「ねぇ」


ぐっと近づいてきた長谷川くんの綺麗な顔に体が硬直した


「俺のことも考えて」


……ん、ん?


耳元でそんな声がしたと思ったら頭の上に乗る長谷川くんの手


「じゃーね西村華乃。また昼休み」





去っていく後ろ姿を何も言えずに見送る


ちょっと西村華乃の頭では長谷川くんの言葉の意味を解析できないらしいです


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