爽やか王子の裏側は



「…転校の話。考えてくれてありがとうね」





「華乃ならきっと、何があってもわかったって言ってくれるって思ってたの」


うん


「だから心配だった」


え?




「華乃は1歳の時、もうすでにお姉ちゃんになったでしょ?」


お母さんが少し遠い目をして言った


そりゃ、快斗がすぐに生まれたから


「だから小さい時から誰かに甘えたり、頼ったりすることは滅多になかった。物心つく頃にはとてもしっかりしててお母さんもお父さんも驚いたくらい」


ふふ

お父さんまで


「その癖がついてるの」


お母さんの手が頭に乗る


「華乃は自分を大切にすることを知らないの」


「自分?」


「快斗や柑奈、私までもを優先してくれる。それはとっても素敵なことだけど…そればっかりでもダメなのよ?」


でも…お母さんたちが大切だから


「華乃がお母さんたちを大切に思ってくれるのと同じで、私たちも華乃が大事なの。」


さっき、快斗も言ってた


「華乃が自分の気持ちをないがしろにするのを何度も見てきてるから、滅多に気持ちを表に出さないあなたがあんな風に傷ついてるのを見て
いてもいられなくなったのよ快斗は」


…快斗


「華乃、あなたはお父さんによく似ているわ」


お父さん?


「自分の気持ちをよく隠すところと、常に笑おうとしているところ」


…常に笑うって


「お父さんってね、みんなの前ではいっつも爽やかで優しい人だったけど、本当は結構性格悪くってねぇーでも自分の気持ちはなかなか表に出さないし、いつも偽物の笑い方ばっかしてた」


なんか…すごい園川くんみたい


お母さんは思い出したように少し笑った



「でも…自分に嘘つけない気持ちもあるって言ってたよ」


嘘つけない気持ち


「恋だってさ」


「こい?」


「くっさいよねぇーキザすぎて寒気するよねー」


お母さんは声を出して笑った



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