爽やか王子の裏側は



走りながら整理する


転校ってなんだよ


ふざけんな


なんで言わないんだよ



助けろってなんだよ


何から助けりゃいいんだ


西村の恋ってなんだよ


でも、


もう考えるのはよそう


西村に会わなきゃ




職員室


肩で息をしながらあたりを見回す


いねぇぞ西村



「真一くん」





「長谷川先生」


大翔の…


「もしかして、西村華乃探してる?」





「はい」


はっきりと答えた


「そうか…聞いたのかな?転校の話」


先生も知ってたのか


「残念ながら彼女はちょっと前に職員室を出たよ」


くそっすれ違いかよ


「それから、君に言っておこうと思ったことがあって」





「大翔のこと、ありがとう」


っ、


「陸部の手続きも終わったし、来月から正式に入るんだって?いきいきしてるよ。君のおかげかな」


いや…


「俺じゃないです。西村がいてくれたから俺はあいつと話せたんです」


西村がいなかったら…きっと、大翔とは一生話せなかった


「そっか…彼女はすごいね」


「はい。とても」


軽く頭を下げて振り向こうとした


「真一くん」


再び名前を呼ばれる


「はい?」


「後悔のない選択をしなよ」





「そのために、西村を探します」



もう一度頭を下げ、再び走る



どこだ、教室?



階段を駆け上がりながら西村の言葉を思い出す



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