爽やか王子の裏側は



『好きなんでしょ?陸上』


『話してくれないかな』


『力になりたいの』



自分のこととは関係ないのに


お節介で


俺と大翔のことにあんなにも必死になってくれた


だから今度は…俺が西村のために必死になるときだ



ダッと教室の扉を開けて中を見る



西村は…いない


シクラメンの前には誰もいない、じょうろも触られてない


「あー!園川くんだー」

「おはよ真一」


クラスメイトの視線が集まり思わず笑みを作ろうとした


だけど



「園川くん」





片瀬と西村とよく話すところ見る横山が名前を呼んだ


普段はおどおどしてるのに今は俺をしっかり見ていた


「西村さんなら教室には来てないよ」





「早く行ってあげて」


「…ああ、ありがとう」



教室を出ようとした



「園川くんどこ行くのー?」

「はなそーよー」


「うるせぇ構うな!」


反射的に声が出た


一瞬しんとしたクラス


もうどうでもいい



西村を見つけなきゃ


今まで取り繕って作ってきたものが壊れようがどうでもいいけど、西村がいる生活が変わってしまうのはダメだ


変にざわつく教室を背に走る





西村


いついなくなるんだ



なんでカバンが置いてないんだよ





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