爽やか王子の裏側は



図書館につながる廊下をほぼ全力で走る


何人かとすれ違って何人かに名前を呼ばれた気がしたけど全部見えも聞こえもしない



図書館の扉を乱暴に開けた瞬間



「つぅわ!!」


「うわっ!」


ちょうど出てこようとしていた人物とぶつかった


「いってぇ…って真一かよ」





「大翔!」


迷惑そうに俺を見る



「…その様子じゃあ聞いたのか?」


…お前は知ってたのかよ


「ああ」


「俺さ、西村華乃に告白したよ」


「…はっ!?」


唐突の暴露に激しく動揺する



「転校するって聞いて、その前に返事聞かせてって言ったけど…」





「そうか」



モヤモヤする


こんな事態だってのに自分より先に伝えられたことに腹を立てる




「…でも断られたよ」


…え?


「好きな奴がいるんだってさ」



好きな…



「なあ真一。俺西村華乃が初恋なんだよ。本当は今だって諦めたくない…いや、多分諦めなかったと思う」


思う?


「西村華乃の好きな人っていうのが…俺の知らない他のやつだったら諦めなかった」


それって…


「でも、ちょっとその恋敵は俺にとってはくせ者すぎたみたいだな」


大翔はちょっとかっこつけてそう言い、あからさまに俺の肩を打った


西村の…好きな人が…俺ってこと?


「おい親友、お前俺のかわいそうな失恋も背負ってんだからな…失敗したら殺すぞ」


「大翔…」


「さっき、西村華乃が中庭歩いてんの見た」



え、中庭?



「中庭通るって言ったらどこ行くかわかるよな」



…旧校舎



「早く行けば?」


「大翔…ありがとう」


再び向きを変え、走り出す



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