爽やか王子の裏側は



走った


もうちゃんとガチで走った


早く会いたい


なんでこうもすれ違うのかな


お前と変な距離があったたったの1日



その1日が果てしなくつまらなかった



俺は西村がいないとダメみたい



何度目かの角を曲がったところで何かが動いているのが見えた



「わっ!びっくりしたー園川じゃん」


宇野!?


「どうしたんだよそんなに走って」


いいところに!


「宇野!俺と西村SHR欠席するから言っといて!」


「え、ええ!?」


「それから!俺西村が好きだからお前は諦めろ」


「はあ!?」


「西村も多分俺のこと好きだからお前に勝ち目はない!さっさと失恋しろ!」


「そ、園川!?」


遠ざかっていく宇野に自分でもめちゃくちゃだと思った言葉をぶつける


ああー恥ずっ


俺何言ってんだよ


でももういいや



ひたすらに走る




放課後のピアニストがいる旧校舎



あの日、俺がたまたま聞いたピアノがこんなにも俺を変えるなんて思わなかった


自分の性格は好きじゃないけど


あのくらいストレス溜めてないと多分西村には会えなかった




俺は、毎日欠かさずシクラメンに水をやる西村が


ピアノを弾くと雰囲気が変わる西村が


結構単純で、でも意外に不器用な西村が





どうしようもなく好きだから


< 277 / 292 >

この作品をシェア

pagetop