爽やか王子の裏側は



私の腕を握っていた春海くんの手が少し下がっていき、私の手を握る


心臓がどだどだ言ってる


ドキドキなんかよりもすごいやつね


「あいつのことなんか忘れちゃえ」


え?


さっきのちょっと怖い表情はもうなかったけど、また始めて見るような新しい顔


ちょっと赤くなってる…


照れてるのかな


そんな顔したら期待しちゃうよ?私バカだもん。

さっき天才って言ったけど


「日菜さんが僕以外の人に触られるとすごいムカつく。自分が自分じゃないみたいに腹が立ってくるんだ」





それは、一般的にいう嫉妬ってやつになるんだよ


春海くん



私、自惚れちゃうからね


悪いのは春海くんだからね



「春海くんのハチマキは…私がつけるから、春海くんは私のハチマキつけて」


…い、言っちゃった


「…え?」


あ、あの一言


「わ、私、春海くんのことが好き」


言ったぁぁぁぁ!


言えたよ!華乃ちゃん褒めて!


私天才だよ!



「…ほんと?」



春海くんの目がまん丸になってる


「…かっこぃぃ」


あ、違う


「う、うん、ほんと。」


「…」



うわぁ!


瞬間下にしゃがみ込んじゃった春海くん


え、なに?どうしたの


お金でも落としたの


「…うれしい」






「うれしいよ日菜さん!」


しゃがんだと思ったら今度は立ち上がった


ぐい


わぁ!


背中に回る春海くんの手


はぐだ


ハグされてるよ華乃ちゃん!



「俺も日菜さんが好き。誰よりも好き。めっちゃくちゃ好きだよ!」


き、き、きゃぁぁぁ



なんかすごいこと言ってもらえた


すごいこと言ってもらえた



「愛してるよ日菜さん」


あい、愛だって!


「わ、わ、私もっ」


王子様のような笑顔を見せてぎゅーっと抱きしめてくれた


きゃぁあぁ


照れるよぉ




ふと、顔が見える体制にされて柔らかい笑顔を向けられる



「鹿田くんのことなんて忘れちゃえ」



ほ?


その優しい笑顔にはあんまり似合わないような音をした声で言われてちょっとドキッとする



「僕、結構嫉妬深いからね?他の男が日菜さんに触るなんて多分耐えられないから」



な、なんだろう





新しいドキドキがした気がしたよ、華乃ちゃん




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