爽やか王子の裏側は
「華乃ちゃん」
お!
「日菜ちゃん!」
ぼうっと片想い相手を見つめる私の視線を遮ったのは綺麗な茶色い髪を二つにゆるっとまとめた小柄な女の子
片瀬日菜ちゃん
いつも眠そうな目をしていてポワポワとお花が飛んでいそうな
心ここにあらずといった雰囲気のちょっと変わった不思議ちゃん
そのオーラのせいかなかなか人に近づかれず
私同様かなり孤立していた
そんな私たちだけど気がついたらこんなに仲良くなったんだ
「また見てるー?あのーなんとか川さん」
「う、き、気のせいだよ」
日菜ちゃんは私の無謀な片思いのことを知っている
しかしクラスメイトの名前を一切と言っていいほど覚えていないため園川くんの名前も知らない
「今日も残るのー?放課後」
「うん、そのつもり。今日までしかできないからね」
「そっかぁー」
「一緒に帰れなくってごめんね」
「全然大丈夫だよぉー」
なんの話かというと、
放課後
「じゃーねー華乃ちゃん」
「うん!また明日ー」
次々と下校していく生徒と逆の方向へ向かう
最近は使う人がなかなかいない旧校舎
二階に上がる階段を登ってすぐのところに古い音楽室がある
そっと中を覗き、キッと音を立てて扉を開ける
ここはいろいろ壊れてるから鍵がかかってない
西日が差し込んでエモーショナルな雰囲気だなぁなんてことを考えながら鞄を下ろす
少し色のくすんだ黒いグランドピアノ
そっと撫で、蓋を開ける
太陽を浴びて少し光っている白い鍵盤を押す
ポンと綺麗な音が響く
靴を脱ぎ、靴下になって椅子に座る
はぁー!
落ち着く