爽やか王子の裏側は
忌々しく前髪をかき上げて顔を上げると昨日と同じ光景
曲がり角から上半身だけひょこっと出した西村がいた
「なに?西村さんまた盗み見?趣味悪いね」
俺の言葉にわかりやすくビクッとする
「ほかにすることないの?暇なの?」
お?
怯えて逃げるかと思ったのに…
西村にしては珍しく俺をキッと睨んだ
「そんなんじゃありません、ただめんどくさそうだなって思って見てたんです!」
…
めんどくさい?
「そうです!
だってどう見ても演じすぎなんですよ!
周りに常に気を遣ってて、発言一つ一つがシナリオみたいなんです
めんどくさくないんですか?
見てるこっちが息苦しいですよ!」
……
……
息苦しい…か
シナリオみたい…ね
なんだろ
まじかって感じだ
西村に図星突かれるとは…思ってもなかったな
「へぇ珍しいね、西村さんがそんなふうに喋るなんて」
何故か自分で言っときながらビクビクしていた西村に声をかけると恐る恐る俺を見上げた
…ドキ
しっかり合ったことのない視線に思わず心臓が鳴いたのがわかった
スッと息を吸っていつも通りを装う
「いつもおどおどしてたからそんなはっきり喋れるなんて知らなかったよー」
影のあるであろう笑みを向けとく
「…めんどくさい…か。なるほどね。でもなんでそれを君に言われなきゃなんないの?」
「別に誰が言ってもいいじゃないですか」
…へぇ
「ふーん…西村もさらけだしはじめたねぇ」
いつもの西村からは考えられない威勢の良い姿に思わず後退りしたことは内緒