爽やか王子の裏側は
「ぴ、ピアノ」
「そう、ピアノ。俺がここで寝てたの知ってんのってあのときここにいたからだろ?」
じゃ…やっぱりピアノの子って
「最近よく弾いてただろ?」
戸惑ったように隠すように目線を逸らす
そうか
そうなんだ…
「…なんだ…お前か」
この前まで俺の日々の癒しをしてくれてた柔らかい音色と西村の表情が重なる
ああ…あの匂い
昨日西村を捕まえた時、一瞬だけ香ったのはブランケットと同じ匂いだったんだ
西村だ
たしかにあの音は…
西村なら出せそうだな
「ね、弾いてよ」
もっかい聴きたい
「い、いやですよ!」
「なんで?弾いてたじゃん」
「そ、それは長谷川先生が出張でいないから」
長谷川?
「ああ、あの若い先生か。あの先生がいない時しか弾かないの?」
「そ、そんなかんじ…です」
なるほど…だから最近は弾いてなかったのか
確かにあの先生ここ数日出張だっだもんな
「じゃ、いいじゃん。もう長谷川先生帰ったよ。車なかったし」
「いやです!」
んーー
でも俺の体はもうストレスの限界なんで
癒しを求めてるんですよ
「じゃ、いいつけるよぉ?長谷川先生に西村華乃さんが勝手にピアノ弾いてまーすって」
汚いやり方だとわかっていながら…
「な?頼むよ」
どうしても聴きたい
もう一度あの音楽を
「…わ、かりました」
やった!