爽やか王子の裏側は
……
ーー
気がついたら曲が終わっていた
「すっげ…」
ピアノから指を離すといつもの西村に戻る
「なぁピアノ弾いてる時の西村って雰囲気全然違うな」
「そ、そうですか?」
「なんか見たことないくらいイキイキしてる」
「まあ…楽しいので」
楽しい…か
いいな、
楽しいが綺麗になるとか羨ましい
「園川くんは私のピアノいつから聞いてたんですか?」
え
しんみりとしていると西村の淡々とした声が耳につく
「知ってたんですよね、私がピアノ弾いてたこと」
…ま、まぁ
「なんでこんな旧校舎にまできて聞いてたのかなって…何か旧校舎に用事でもあったんですか?」
う
まさかピアノを聴くためだけに来ていたとはいえない…
ピアノを弾いている子に会いたかったからとか口が裂けても言えねぇ…
「と、とりあえず!長谷川先生とか、他の人には言わないでくださいね!」
ほぉ…
なるほど
他の奴に知られたくないわけか
「…んーどうしよっかなぁ」
ま、当然他の奴になんか言わないけどね
だって俺が見つけたんだもん
他のやつなんかに俺の癒しを邪魔させるわけにはいかない
「もし言うんだったら私も園川くんが本当はゲス野郎だって言いふらしますよ!」
ゲス野郎ww
「言わないでくださいよ!私がピアノ弾けるのここしかないんです!」
…
え?
ここしかないって…ピアノが?
「…はい。家にはピアノがないので。ここで弾けなくなったらもう…」
…それは困るな
「じゃーお互いに秘密握ったわけだし、フェアに行こう」
西村の顔が確かに歪んだのを確認した。