爽やか王子の裏側は




ーー



はぁ〜


幸せ


しばらくピアノと2人きりの特別な時間を楽しみ、少し薄暗くなった窓の外を見る


「そろそろ帰らなきゃ」


靴を履いて鞄を持つ


今日でしばらくこのピアノとはお別れ


長谷川先生が出張のタイミングをいつも見計らっているんだけど


今回みたく何日か連続で出張に行ってくれることはなかなかない



私の家にはピアノがないからこういう時にしか弾けない特別な時間


名残惜しく、夕日を反射する黒いピアノを撫で
出口へと向かう


音楽室の扉を開けようとした手が止まった





誰?



扉の横、柱になってるところに誰かが座ってる?っぽい影がある


い、いつからいた?


わ、わ、私が勝手にピアノ弾いてるのバレたかもしれない……


や、やばいかもしれない


恐る恐るその人物を確認するためにそぉーーっと扉を開ける


……


っ!?!?


扉を閉める



え、え、え?うそうそ?


い、今のって…


そ、園川くん?


いや、待てよ


私の幻覚の可能性がある


なんせ片思いの相手が都合よくこんなところに座ってるなんて少女漫画的構図あっていいわけがない

そうだ

そうに決まってる

それに放課後は部活があるはず


きっと園川くんに似た長谷川先生だ
(西村華乃は混乱している)


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