爽やか王子の裏側は



自分の頬を叩きもう一度扉に手をかける


キーッと小さな音を立ててそれは開き、その向こうに座ってピクリとも動かない影をとらえる


…いや、間違ってない…


この人は園川くんだ


柱にもたれかかって目を瞑っている


ね、寝てるのかな


片膝を立てて座り込み、サラサラの髪が顔にかかっている


それを照らすように夕日が差し込んで
もう、一枚の絵なんではないかと錯覚するくらい、綺麗で目を奪う


そっと近づき顔を覗き込む


…やっぱり寝てる


スースーと静かな息と音が聞こえる


い、いつからいたんだろう


私のピアノ聞いちゃったかな…


いや、まて、聞いていたとしても私だとはわからないかもしれない


この音楽室の扉、一部がガラス張りだけどだいぶ傷ついててくすんでるし、


きっとバレてない!


そう言い聞かせて、園川くんが起きる前に退散しようとした


けど…


「こんなところで寝たら…風邪ひいちゃうよね」


もう日も陰ってきてるし、秋だし、寒くなってくるだろうから…


軽く深呼吸をして園川くんの前にしゃがむ


「そ、園川くん。」


その名前を本人を目の前に口にしたのはきっと初めてだ


この人が好きなんだっていう自分の気持ちが
名前を呼ぶだけではっきりとしたものになる


「園川くん」





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