爽やか王子の裏側は



ーー




私が園川くんを好きになったのは本当に些細で、単純なことがきっかけだった


昔から人に馴染むのが苦手で、感情をあまり表に出さない私は人から距離を置かれることが多かった


あの日もそうだった


席替えで隣になった男の子に話しかけられたけど、緊張して何も返せず結局無視するみたいになっちゃったんだ


「西村さんって感じ悪いよな」

「西村さん?誰だっけ」

「俺の隣の席になった人だけどさ、今日ガン無視されたんだよね」

「まじ?どんまいw。でも私もあの人ちょっと苦手だなぁ」

「分かるー暗いし何考えてるかわかんない」


放課後、クラスメイトのそんな会話を偶然耳にしてしまった


ー ああああっなんてこったぁ。高校は頑張っていろんな人と仲良くなろうと思ってたのに
結局こうなるのぉ泣


ー ていうか、どうしよう入れない泣


教室の入り口で中に入れずめっちゃ絶望してた私

でもそれを救ってくれたのが彼だった



「そう?ただ感情表現が苦手なだけじゃないかな?普通に話す子とは話してるし、悪い子じゃないと思うよ」


ー !!


そう言ったのが園川くんだった


「俺は嫌いじゃないよ?毎日後ろの鉢の水やりしてるのもあの子だしね」


ー …見ててくれたんだ。誰も気にしてないと思ってたシクラメンのこと…


園川くんはただ辺な雰囲気になり始めていたクラスメイトたちを和ませたかったから言っただけかもしれない


たまたま目に入った私の行動をたまたま覚えていて、それを偶然口にしただけかもしれない


でも、それでも私はめちゃくちゃ嬉しかった



それから園川くんに興味を持ち始めてよく視線で追うようになった

園川くんはみんなに慕われる完璧王子ってだけじゃない

それに気づいたのもきっと私が園川くんばかり見ていたからだ


園川くんは人の悪口を好まない


誰かが誰かのことを悪くいうとすぐに話題を変えたがる

私の時だってそうだった

1人になってる人に声をかけたり、みんなの前で褒めてあげたり、


園川くんは素直に優しい人なんだ



それを知って、私の彼に対する特別な気持ちにも気づいた


完璧でかっこいいから好きになったんじゃない


単純に優しい彼のことを好きになったんだ


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