爽やか王子の裏側は



「ショパンのノクターン」


……


え?


聞き慣れない声


わっ


視線を下ろすと机に突っ伏して寝てた長谷川くんがこっちを見ていた


黒い髪の間から見える透き通った切れ長の目


なにを考えてるのか分かりづらい表情…


しっかり目が合ったのって初めてかも



「そうでしょ?」


「え?」


「今の曲」


今の…?


私が頭の中で弾いてた曲?


「鼻歌」


はな…うた


え、嘘歌ってた?


は、恥ずかしっ!


「珍しいね。JPOPじゃなくてクラッシックなんて」


「そ、そうかな」


「好きなの?」


「まあ…好きです」


「ふーん」


な、なんだこの人


今までまともに話したこともないのに


なんかめっちゃ喋るじゃん


相変わらず無表情だけど


「俺はクラッシックだったらショパンよりもドビュッシーとかチャイコフスキーとかの方が好きかな。
特にドビュッシーの月の光なんかは王道だけど好き」





月の光


「私もすき」


「月の光?」


「うん。聴いた時から耳から離れなくって楽譜探し回ったくらい」


少しでも安いのを買おうといろいろ見て回ったよな


「楽譜…ピアノ弾けるの?」


「多少は」


「へぇ…」




って!私はなにをぺちゃくちゃと話してるんだ


ましてや仕事中に!

ましてや図書館で!

ましてやほぼ初めましての人と!



「せ、整頓してきます棚…」



明らかに不自然だけどとりあえず席を立った


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