爽やか王子の裏側は


放課後


図書室に向かう


はぁめんどくさいなぁ


委員会って言っても特にする事ないのに


「西村華乃」





いきなり慣れない声に名前を呼ばれて足が止まる


「あれ、長谷川くん?」


意外な人だったな

てか名前知ってたんだ

呼ばれた事なかったから知らないのかと思ってた


「図書室向かってる感じ?」


「そんな感じ」


軽くうなずいて長い足で私に追いつき隣に並ぶ





一緒に行くってことかな


「これ、あんたの?」





その手には赤いブランケットがかかっていた


「うん」


「返す。図書室って落ち着くよね。俺好きだわ。」


あ、うん


……


それだけ!?


え、いやなんかさ、ないの?


お礼とか


いや迷惑だったならごめんなさいだけど


せめてなんか言えや。


図書室の感想言われてもな…



少し困惑しながらも


案外綺麗に畳まれたブランケットを受け取った



変な人だな




「あのさ、あんたピアノ弾けるって言ってたよね」


話の切り替わりが唐突


「習ってたの?」


いやいや、そんなお金はナッシング


「独学だよ」


「え、独学?独学で月の光弾いたの?」


「うん」


大変だった


なかなか指が動かなくって苦戦したよ


「それキツくない?」


「キツかったけど…好きだから頑張れたよ。一生懸命やってればそのうちできるようになるしね。」





私の言葉に少し表情が変わった長谷川くん


「……好きだから…ねぇ」


ん?


「なんかさ、そういうのって綺麗事じゃない?」


……



は?


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