爽やか王子の裏側は
「ありがとうございました」
よっしゃ!委員会終了!
くあっとあくびをしている長谷川くんをロックオン!
図書室から出ようとした長谷川くんの鞄を掴んだ
「わ…何?」
「ちょっと来てください」
「は?なん、え、ちょ」
強制連行じゃ。
ズカズカと進み旧校舎に向かう
今日は弾かない予定だったけどこれは緊急事態だから別だ
ピアノを馬鹿にするんじゃない!
「ちょ、おい!西村!」
鞄をしっかり掴んで進んでいくので長谷川くんはかなり変な体制になっている
背が高くて足が長いため前屈みになって何度もつまずいている
けっ
知らん知らん
つまずけつまずけ
「ここ…」
音楽室の扉を開ける
そこでやっと鞄を離す
「西村?」
振り返ってキッと長谷川くんの目を見つめた
「…私、長谷川くんのこと嫌いです。一生懸命ピアノを弾いて、好きだから頑張ってるのにそれをあんな風に言われると腹立ちます。」
少し整理していたことを順々に口にした
「綺麗事とか、他人に認められたいとか、それは長谷川くんの価値観で合って、私のものじゃない。
自分の価値観でしか周りを見られないなんてかわいそうですね」
かなりきついこと言ってるかもって思ったけど
別にいいや
先に吹っかけてきたのはそっちなんだから
「私は見世物としてじゃなくて、好きだから、ピアノを弾きたいから弾いてるだけ。
長谷川くんだって音楽が好きなら分かるでしょ?誰かと共有しようが1人で楽しもうが音は変わらないんだから。」
長谷川くんは目を丸くして私を見ている
「私は純粋にピアノが好きなの。弾いてる理由はそれだけ。誰かのためじゃない
……いや」
それは今までかな
今は…少なくとも自分だけじゃなくて
もう1人
園川くんっていう存在がある
私のピアノを好きだって言ってくれる人
「自分を含めて私の音を好きでいてくれる人のために弾いてるから」