爽やか王子の裏側は



ポンーーー



!!!


音が…違う


私のよりもはるかに軽く、繊細で、力強い


音が音楽に変わる


『月の光』


私と同じ曲のはずなのに


全てが違った


安定しているテンポ


芯のある音


楽譜が目に見えるくらい確実な進み


私の光より明るくてクリアな月の光


圧倒される


ーーー


曲が終わって指が鍵盤から離れても、余韻が脳内を流れる


「これが俺の月の光…全然違うでしょ?」


「全然…違う」


「でも俺は…西村華乃の音の方が好き」


…え?


「俺みたいに機械的で確実性だけを求めた音なんかじゃなくて、柔らかくて優しい…俺には絶対出せない音」


「…」


柔らかくて優しい


「西村華乃の言ってること分かった気がする。悪かったよ…変に喧嘩売ったりして
あんたは違うんだね。あんな音出せる人、なかなかいないよ」


…長谷川くん


「長谷川くんの音は、軽くて強くて、芯があって…私とはほぼ真逆なんだね。でも音もだけど私は長谷川くん自体に惹かれたよ。ピアノがよく似合うね」


目が離せなくなっちゃうくらい


「…似合う…?そんなこと…初めて言われたよ」


「そう?というか、ピアノ弾けたんだんね」


「小さい時から習ってたから。でも独学であそこまでできるのは本当に尊敬する。馬鹿にして悪かったよ」


決まり悪そうに視線を外した


「私もごめんね。嫌いって言ったの訂正するよ」



思わず笑みが溢れた


とりあえず……何とかなったのかな


展開が急すぎて頭が追いつかない気もするけど



「……」

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