ニナの白歴史
反転
ニナと一緒に自室に入ると、ニナは勝手にベッドに座り込んで隣をポンポンと叩いた。
「想太、隣に座って。電気は付けないままでいいから」
「え? うん」
僕が言われた通りに座ると、ニナは急に僕の手を握った。
「ニ、ニナ?」
「しっ、静かに。そのまま目を閉じて」
暗がりでそう囁かれ、僕はドギマギしつつも目を閉じる。
「想太は今朝、伝説の生き物に会いに行きたいって言ってたよね?」
静寂の中から伝わってくる彼女の声に、僕は頷く。
「あの時の約束、今果たすから。だから想太も協力して」
「協力って、何を?」
「ただ強く信じるの。自分に出来ないことなど何もないって。ほんの少しも疑う余地もない程に」
ニナにそう言われ、半信半疑になりつつも僕は意識を集中させた。
最初は難航すると思ったけど、昔から空想の類は得意な方だったので意外とすんなり意識を集中させることが出来た。
すると次第に、繋いだニナの手から不思議な温かい感触が流れ込んでくるのを感じた。
「ニナ、何だか手が……!」
「静かに! もう少しだから」
彼女に窘められ、仕方なく意識を戻すと――
視界がフッと暗転し、気が付くと僕とニナは手を繋いで街の遥か上空を飛んでいた。
「な、何これ……⁉」
「さっき言ったでしょう? 二度と覚めたくなくなるような夢の中へ連れて行ってあげるって」
隣で制服姿のニナが白い髪を彗星のようになびかせながら答える。
そうか、これは夢の中なんだ。
だったら僕は何だって出来るじゃないか。
ニナが言っていた、成層圏にしかいないフェニックスに会いに行くことも、マリアナ海溝に眠る巨大クジラを見ることも、太古のジャングルの金のライオンと競争することも……!
いや、想像力を駆使すればそれを超える世界だって創り出せるんだ。僕とニナが力を合わせれば、きっと。
「行こう、ニナ! まずはこのまま飛んで行って、フェニックスに会うんだ!」
「会って、どうするの?」
「うーんとね……質問してみたい! 世界一高い所をずっと飛んでるのはどんな気分なのかって」
「フフッ、何それ変なの!」
おかしそうに笑うニナと共に、僕は空の彼方へと飛び去って行った。
僕とニナはその夜世界中の色んな場所を飛び回り、たくさんの体験をした。
ニナと二人なら、出来ないことなど何もなかった。
夢を見ている内に、だんだんと僕は世界がより濃く鮮やかに色づいていくのを感じた。
まるで現実と夢が反転したかの様に。現実と夢の境界が薄れていって、段々と世界は夢幻に侵食されていって……
そして気づいた時にはもう、僕は元の世界には戻れなくなっていた。
「想太、隣に座って。電気は付けないままでいいから」
「え? うん」
僕が言われた通りに座ると、ニナは急に僕の手を握った。
「ニ、ニナ?」
「しっ、静かに。そのまま目を閉じて」
暗がりでそう囁かれ、僕はドギマギしつつも目を閉じる。
「想太は今朝、伝説の生き物に会いに行きたいって言ってたよね?」
静寂の中から伝わってくる彼女の声に、僕は頷く。
「あの時の約束、今果たすから。だから想太も協力して」
「協力って、何を?」
「ただ強く信じるの。自分に出来ないことなど何もないって。ほんの少しも疑う余地もない程に」
ニナにそう言われ、半信半疑になりつつも僕は意識を集中させた。
最初は難航すると思ったけど、昔から空想の類は得意な方だったので意外とすんなり意識を集中させることが出来た。
すると次第に、繋いだニナの手から不思議な温かい感触が流れ込んでくるのを感じた。
「ニナ、何だか手が……!」
「静かに! もう少しだから」
彼女に窘められ、仕方なく意識を戻すと――
視界がフッと暗転し、気が付くと僕とニナは手を繋いで街の遥か上空を飛んでいた。
「な、何これ……⁉」
「さっき言ったでしょう? 二度と覚めたくなくなるような夢の中へ連れて行ってあげるって」
隣で制服姿のニナが白い髪を彗星のようになびかせながら答える。
そうか、これは夢の中なんだ。
だったら僕は何だって出来るじゃないか。
ニナが言っていた、成層圏にしかいないフェニックスに会いに行くことも、マリアナ海溝に眠る巨大クジラを見ることも、太古のジャングルの金のライオンと競争することも……!
いや、想像力を駆使すればそれを超える世界だって創り出せるんだ。僕とニナが力を合わせれば、きっと。
「行こう、ニナ! まずはこのまま飛んで行って、フェニックスに会うんだ!」
「会って、どうするの?」
「うーんとね……質問してみたい! 世界一高い所をずっと飛んでるのはどんな気分なのかって」
「フフッ、何それ変なの!」
おかしそうに笑うニナと共に、僕は空の彼方へと飛び去って行った。
僕とニナはその夜世界中の色んな場所を飛び回り、たくさんの体験をした。
ニナと二人なら、出来ないことなど何もなかった。
夢を見ている内に、だんだんと僕は世界がより濃く鮮やかに色づいていくのを感じた。
まるで現実と夢が反転したかの様に。現実と夢の境界が薄れていって、段々と世界は夢幻に侵食されていって……
そして気づいた時にはもう、僕は元の世界には戻れなくなっていた。