【短編】卑屈姫の神隠し
✣✣✣✣✣

 「躑躅(つつじ)様、なぜこのような娘を呼ばれたのですか!」

うるさい、と思いながらリツカは瞼を押し上げた。
まだ眠っていたかったのに、誰かを責める声が眠らせてくれない。

「おお、目が覚めたか」

深く低い声。首を上に向けると、銀色の長髪の男がリツカを見下ろしていた。

「ひっ」
「ひ、とは何だよ。せっかく俺のベッドの上に寝かせてやっているのに」

そう言われて初めて自分の状況を理解した。
ここはこの男のベッドで、自分はこの場所に覚えがない――。

「待て待て待て」

逃げようとした襟首を男に掴まれた。

「この女、躑躅様に何と無礼な!」

目覚めたときに聞いた声。

うるさいなとそっちを向くと、今度はブロンドにオールバックの髪にスーツを着た男が立っていた。

また走り出そうとするも、すぐにベッドに戻される。

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