年上同期の独占愛~ずっと側に
「お正月は東京で過ごせるように、がんばる。待っててね。」

電波が途切れてきたので、じゃあ、と言って電話を切る。会えなくてとても残念だったけど、声を聞けてよかった。

さて、そろそろ本格的に眠くなってきたし、家に帰るか、と新幹線の改札を出ようとすると、見たことのある女の人が前を横切った。

立花さんだ・・・。こんなところにいるなんて旅行、だろうか。しかし、向こうは私に全く気付くことなく、行ってしまった。少しだけ嫌な予感がする。胸がモヤモヤするが、考えたって仕方ない。忘れよう。

結局林君は年内いっぱい大阪から帰ってくることはなかった。お正月も三日を過ぎたころ、やっと会うことができた。大阪で激務だったのか、少し痩せたように見えて心配だったが、一緒に初詣に行って、お昼食べて、また明日から会社だね、とほんの数時間しか会えなかったけど、顔が見れてよかった。

仕事が始まると、年度内にスケジュールどおりに構築するために、どの部門もかなり業務が押してくる。残業の毎日で全然林君と会えない。

お昼休み、社食まで食べに行く気力もなく、後でコンビニで何か買ってこよう。と会議がとっくに終わった会議室の机で突っ伏したままグダグダしていた。午後もまた会議だ。次は次年度予算の話だから、また頭を切り替えなきゃ。ついていけるかな・・はあ、しんどい・・・と心の中で毒づいていると、会議室の入り口がコンコンとノックされる。半分だけ顔を上げると橋本さんがレジ袋を提げて立っていた。

「お疲れ様です。」

慌てて上体を起こすして、挨拶すると、クスっと笑われた。

「大変そうだね、統括は」

「次年度の人員計画、手を付けだしたばっかりなんですけど、叩きでいいから打ち合わせしたいって言われて・・頭こんがらがってます。」

「次から次だね~。まだプロジェクトも中盤だから、先は長いよ。ちゃんと食べて。」

ほら、とレジ袋を差し出されて、中を見るとおにぎりとサンドイッチが入っていた。

「これ私に?すみません。お財布席にあるので、後でお支払いします。」

「いいから。あ、じゃあ、コーヒー飲みたいから、おごってくれる?」

そう言って、リフレッシュルームのほうへ誘導されて一緒に向かう。
自販機の前に着くと、ほら、といってカフェラテを渡される。橋本さんの手にも自分の分のコーヒーが握られていた。

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