年上同期の独占愛~ずっと側に
言われてみれば、緒方マネージャーは結構イケメンだ。厳しい上司というイメージで凝り固まっていたが、最近やっと優しい一面も知るようになったばかりだ。思い起こせば懇親会でも数少ない女性に囲まれていた。愛妻家で有名なのもポイントが高いのだろう。そんなことを三人でワイワイ話していると、お疲れ様、と上から声がかかる。顔を上げると林君だった。

「あ、林君、お疲れ様。」

「お疲れ様です。」

「お疲れ様。」

橋本さんと山元さんも口々に挨拶する。林君はこれから食事らしく、トレーを手に持っている。

「萌々ちゃん、もう終わり?せっかくだから少しだけいい?」

「うん。10分くらいなら大丈夫だよ。」

林君と私が会話していると、タイミングよく山元さんが口を挟む。

「じゃあ野崎さん、お先に行ってますね。林さんもまた。」

山元さんと橋本さんが先に戻ると行ってしまい、私と林君が二人残される。

「久しぶりだね。」

「うん。ごめんね。もうすぐ落ち着くと思うから。」

「もう年度末だもんね。俺も今年度中にまた大阪が1回入りそうなんだ。」

そっか・・・。しばらくすれ違っちゃうな。でも仕方ない。お互い仕事していればこんなこともあるだろうし。我慢しないと。
林君は急ぐね、と言って5分程度で食べ終わり、じゃあ、また連絡するね。とお互い手を振って別れた。

それから2週間ほど、電話やメールで連絡は取り合っていたものの、デートは全く出来ず、いい加減ゆっくり会いたいと不満が募り始めていたころ・・・・・

お昼を一人で社食でとってエレベータに向かっていると、隅のほうで電話をしている男の人がいた。よく見ると林君だった。電話、長くかかるかな・・少し話せるかな、と近くまで寄って行ったのが間違いだった・・・。

「うん。じゃあ、今夜アヤの家行くから・・・うん。泊まるよ。・・・」

アヤ?今夜?・・・泊まるって・・・。
確かに聞こえた、『アヤ』、『泊まる』。一瞬で頭が真っ白になり、うまく体が動かない。ダメだ、午後から仕事だし、今林君と話しても何もいいことはないだろう。

「萌々ちゃん・・・」

林君に声をかけられて、はっと顔を上げると、エレベータのほうへ向かって走り出した。

「待って。萌々ちゃん!」

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