年上同期の独占愛~ずっと側に
22時過ぎ、今日はいい加減切り上げないと、電車がなくなる、と思い後片付けを始める。

そういえば、携帯の電源を落としたままと思い出し、電源を入れると林君からの着信は19時を最後にそれ以降は入ってなかった。そうだよね・・・今日はアヤのところに泊まりに行っているはずだ。アヤを優先したという事実にショックを受けている自分に苦笑する。

その日から、私は林君のことを避けた。

もう無理だった。幸せの絶頂から地獄に突き落とされた気分だ。亮の時はジワリジワリと疑いが確信に変わり、亮のすべてが信じられなくなっていた。

しかし、今回私は林君のことを信じていた。大好きだった。新入社員の頃からの恋が、やっと実って両想いになって恋人になれたのが嬉しかった。
事実を知るのが怖かった。だったら逃げたほうがマシだ。何も聞かず、このまま別れたかった。

一睡もしなかった割に、頭は冴えている。今日の仕事も頑張れそうだ。

いつもより一時間早く席につくと、さっそく資料作りに没頭する。ポツリポツリと出勤する人たちが、早いね、とか、お疲れ様、など声をかけてくれる。そんな中、山元さんがおはようございます、と言いながら笑顔で私の席に近づいてきた。

「林さんが野崎さんを呼んでほしい、と入り口のところで待っています。」

「・・・山元さん、変なお願いして申し訳ないんですけど、手が離せないから後でこちらから連絡するって伝えてもらってもいいですか?」

すると、山元さんは特に疑った様子もなく、ニコっと笑って頷くと、了解です。と行って入り口へ向かってくれた。1分もしないうちに戻ってくると、林さん、了解です、って。と再び伝言してくれた。

その日からお昼も持参し、社食へは行かずデスクで食べた。林君から何度か着信と会いたいとメッセージが来ていたが、全部無視する。とにかく、今は会う気はない。色々聞かされたって傷つかないわけがない。これ以上傷つかないまま終わりにしたい。

とにかく仕事の没頭し、余計な事を考えないようにするのに必死だった。1週間はなんとか逃げ切った。ところが、想像通りだが、金曜日の夜、亜都子から電話がかかってきた。

「林君と喧嘩中だって?」

「喧嘩なんかじゃない。もう別れた。」

「えっ?別れたなんて林君言ってなかったよ。」

< 125 / 228 >

この作品をシェア

pagetop