年上同期の独占愛~ずっと側に
「嫌いっていうか飲めないから。」

「それ、ノンアルですか?」

「いや。2杯くらいなら美味しく飲める。それ以上になると気分悪くなる時もあるから気を付けてるんだ。」

「いつからこんなことしてるんですか?飲むなら誘ってください。一人じゃ危ないです。」

「危ないって何よ。酔わない程度に飲んでちゃんと帰ってるよ。」

「でも男性客ばかりじゃないですか。気を付けてください。」

「大丈夫だって。結構顔見知りも増えたし。このお店では新人の頃にお世話になった神田先輩と待ち合わせて飲むことも多いから。」

「このお店では、って他のお店も飲み歩いてるんですか?」

「あと2軒、よく行くお店がある。」

「よく行くって・・毎日飲み歩いてるんですか?仕事忙しいのに?」

「毎日ってわけじゃないよ。」

「体壊しますよ。ほどほどにしてください。もー・・何荒れてるんですか。萌々香さんらしくないですよ。」

荒れてるって・・そんなつもりじゃないないけどね。私らしくって何だろう。お酒は確かに弱いから飲みに行くなんてこと今までなかったけど、一人でBarカウンターでチビチビ飲んでたまに顔見知りの人と他愛もない話をしていると余計なことを考えなくて済むから今はこの生活が良い気分転換だ。

「神田先輩って何者ですか?付き合ってるんですか?」

「そんなわけないじゃん。ここで偶然会った新人の時に参加した異業種研修会で教育係だった人で出版社に勤めてる。神田さんも一人で飲むことが多いみたいで、たまにここで会うんだ。」

「林さんのことは、もう大丈夫ですか?」

「未練とかならもうないよ。もう別れて2か月以上たつから思い出すことももうあんまりない。」

「さっきも言いましたけど、一人で飲み歩くのやめません?私と一緒に行くか、同期の誰か誘って行ってください。」

「ふふ。心配しなくて大丈夫だよ。もうすぐ27歳になるんだよ。」

「そっか。もうすぐですね、誕生日。どこか予約しますよ。たまにはフレンチとかどうですか?」

「フレンチ、いいね。ありがとね。」

弘美がお祝いしてくれると言ってくれるのはありがたいが、後輩に気を遣わせてしまうことに情けなさを感じる。それに、私が一人で飲み歩くことも弘美はよく思っていないのがよくわかる。きっかけが林君との別れだとわかっているだけに、心配なのだろう。
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