年上同期の独占愛~ずっと側に
今日は特に約束もないし、20時までは仕事に集中しようと思っていたのだが、19時近くになり集中力が途切れてしまうと、またムシャクシャ気分が湧いてきてすっかりやる気がうせてしまった。さっき原さんもお先に、と言って退社してしまったし、私も今日はもういいかな、と飲みに行くことにした。この前弘美に釘を刺されたし、1杯だけ飲んでサクッと帰ろう。

いつものお店に入ると、すでに神田先輩が一人で飲んでいた。

「お疲れ。今日は後輩の弘美ちゃん来ないの?」

「お疲れ様です。先輩、弘美狙いですか?残念ながら今日は一人です。
あの、この前は本当にすみません。お世話になりました。あの後弘美にも凄い怒られて・・・
今日は1杯だけ飲んだら帰ります。」

「ククッ。弘美ちゃんに怒られたけど、来るんだな。全然飲めないくせに、何でそんなに飲むんだよ?」

前から思ってたけど・・と、ジッとこっちを見つめながら聞いてきた。

「弱いなりに、飲めば良い気分になれるんで。良い気分になれば嫌なことは考えなくて済みます。」

「今日は?どんな嫌なことがあったんだよ。」

「誕生日なんです。27歳になりました。
だから今日は早く帰ってお母さんが作ってくれた晩御飯食べて、ゆっくりお風呂にはいって寝たかったんです。」

「うん。」

「だけど、少し仕事が混んでて定時には帰れなくて・・」

「うん。」

「もうお母さんのごはんは諦めて、20時くらいまで仕事して、帰り際軽く食べて帰ろう、って思ったんですけど・・」

それなのに・・・ムシャクシャして・・・どうしようもないほどムシャクシャして仕事が手に着かなくて、今日もお酒に頼ってしまった。こんな時弱い自分が歯がゆいと思う。記憶をなくすくらいベロンベロンに酔っぱらえば、楽になるのだろうか。

無言になった私の頭を神田先輩が優しく撫でてくれる。何か、泣きそうだ。しかし、27歳にもなって、誕生日が一人で寂しくて泣くなんて思われたくなくて、ぐっとこらえる。

「寂しくなって飲みに来たのか?」

「寂しいっていうか、ちょっとイライラして。」

「そっか。でも、1杯だけな。この前みたいに気分悪くなるの嫌だろ?」

確かに頭が痛いし吐き気がするし、この前は最悪だった。だから、神田さんが言うように1杯でやめておけばよかったんだが・・・

< 145 / 228 >

この作品をシェア

pagetop