年上同期の独占愛~ずっと側に
2杯飲んだ私は、前とは違って気分は悪くならなかった。だけど、Barで神田さんがお会計してくれたとその先の記憶が曖昧だ。

やってしまった・・・

2時間後、ホテルのベッドで目が覚めた。まだ酔いが醒めきらない頭で隣を見ると、神田さんが優しい目をして私の髪の毛をいじっている。

「目覚めた?」

「ごめんなさい、寝てましたよね。」

「うん。10分くらいね。体調大丈夫?」

「はい。あの、シャワーお先に借りてもいいですか?」

「おう。」

簡単にシャワーを浴びて、メイクを直し服を着て出てくると、神田さんが少し驚いたように聞いた。

「帰るの?」

「はい。今ならまだ電車あるので。ご迷惑かけてすみませんでした。」

神田先輩は、はあー、とため息をつきて、呆れたように、迷惑じゃないから、と言い、

「一緒にいようぜ。まだワイン飲んでないし。明日の朝送ってくから、一度着替えてから会社行けばいいだろう。」

「それじゃあ、ご迷惑かけちゃうので、帰ります。」

「だからさ、迷惑じゃないって。お前、Bar出てからのこと覚えてる?誘ったの俺じゃん。」

覚えてる。確かに誘ったのは先輩だが、寂しくて帰りたくない、と言いながら飲んでいたのは私だ。部屋取ったから、ちょっと高級なワインでお祝いしてあげる、と誘ってきた先輩にのったのは私だ。というか、誘わせたのは私だ。

情けなくて、申し訳なくて、酔いが醒めた今、先輩と一緒にいるのが居たたまれない。後悔とかそういうのではなく、自分の行動も恥ずかしいし、今抱かれたばかりの先輩と顔を突き合わせて話しているのも恥ずかしくてしかたないのだ。

頑なに帰る、という私を、じゃあ俺も一緒に出る、という先輩を説得して、とにかく一人で帰ることにする。
部屋を出ようとすると腕をグイっと引かれた。

「萌々香」

「・・・はい」

「後悔してんの?」

「・・・わかりません。」

「ワイン、一緒に飲もうぜ。」

「・・・・」

「俺飲んじゃってるし、送るれないから。一人で帰らせるわけには行かないし、いい子だから今日はここに泊まれよ。な。」

頭をポンポンと撫でられ、困った様子の先輩の顔を見て、今度は困らせてしまっていることが申し訳なくて、コクンと頷くと、ホッとしたように腕を離される。

神田先輩はかなり場数を踏んでいるせいか、女慣れしていて、神田さんとのセックスは嫌なことは一切なかった。
まるで恋人にするように、優しく触れてくれた。久しぶりな行為に我を忘れてしまい、かなり乱れ、何度か意識が飛んだ。

結局昨夜はワインを飲まずそのまま眠ってしまい、朝目が覚めた時は神田先輩の腕の中だった。シャワーを浴びて軽くメイクを済ませて戻ると、すでに神田さんも起きていた。

送っていく、と言ってくれていたが、面倒になり近くのコンビニで下着を買い、一度出社したあと、ずっとジャケットを着たまま過ごし、駅ビルが開くのを待って無難なブラウスを買って着替えた。

一日の間に色なことが起こりすぎて頭のなかがグチャグチャだ。
神田先輩は俺が誘ったと言っていたが、そう仕向けたのは私だ。
一日中、仕事をしていても、Barに着いてからも、亮と林君の結婚が頭から離れなかった。一時だけでも忘れたかった。先輩が忘れさせてやる、と言ってくれたから縋ってしまった。後悔が押し寄せてくるが、自業自得だ。

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