年上同期の独占愛~ずっと側に
翌日から、プロジェクトの構成が変わるため、人員配置の変更が大きくあるため、一日中会議の日がしばらく続く。会議内容を踏まえ、各部門と人事調整を行うと同時に7月の定期人事も始まるため、怒涛のような忙しさだった。誕生日以来、1週間仕事詰めだったので全く飲みに行っていなかった。

2週間後、比較的早く終わった週の半ば、真っすぐ帰るつもりで駅に向かって歩いて行くと、電話が鳴った。ディスプレイを見ると、神田先輩からだ。あれ以来、連絡していなかった。連絡くれ、と神田先輩から何度かメッセージをもらっていたが、返信できずにいた。

「神田さん、お疲れ様です。」

「お疲れ。今どこ?」

「会社出て、駅に向かって歩いているところです。」

「ちょうどよかった。駅前のカフェで待ってるから。」

・・・

カフェに入ると、神田先輩が右手を挙げて合図してくれる。
向かいの席に座ると、精悍な顔を崩し、ニコっと笑いかけてくる。

「久しぶり。元気だった?」

「はい。返信しないですみせん。」

「いや。想定内だから。」

苦笑しながら、カバンの中を探り、封筒をテーブルの上に置いた。

「誕生日のお祝いだって言っただろう。」

あの周辺のホテルの相場はわからないが、そこそこグレードの高いホテルだった。こじんまりとしたダブルの部屋だったが、飲まなかったがワインも買ってもらったし足りないだろうな、と思いつつ2万円をテーブルに置いてきた。

「でも・・・」

「いいから。しまえよ。」

小さく頭を下げて封筒を受け取り、バッグの中にしまった。
あのさ、神田先輩が小さくつぶやくのが聞こえたので、顔を向けるが、見つめるだけで何も言わない。しばらく無言のままだったが、やがて諦めたように、はあー、とため息をつくと口を開いた。

「お腹空いてないか?」

「今日は家で食べるって言ってあるので・・・」

「そっか。じゃあ、行くか。急にごめんな。」

「いえ。わざわざありがとうございました。」

「もう、飲みに来ないの?」

「いえ。今は本当に忙しくて、吐きそうなくらいです。あと1~2週間すれば、また行きます。」

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