年上同期の独占愛~ずっと側に
エレベータに乗ろうとすると、山元さんが、売店寄っていきますね、と階段のほうへ行ってしまい、橋本さんとエレベータに二人で乗った。

「昨日会った先輩と飲みに行ったりするの?」

「いえ、しないですね。行きつけのお店が一緒なので、そこに行くとたまにいるくらいです。」

「そっか。最近飲みに行くって言ってたもんね。野崎さん、行きつけのお店とかあるんだ。」

飲めないのにね、と少し揶揄うようにニヤっとしながら言ってきた。

「少しは飲めるようになりましたよ。気分悪くならない程度ですけど。」

「今度そのお店、連れてって。」

「ええ?いいですけど・・橋本さん、ご自宅どっち方面でしたっけ。そのお店は横浜なので、もっと近場行きましょうよ。会社の反対側にもよく行くお店あるんです。」

「ん。じゃあ、そこ、連れてって。」

「・・じゃあ、そのうち」

「林とか、小野とかとは一緒に行ったりしないの?」

「・・・しない、ですね。」

「先週、誕生日だったんでしょ?小野と下で会った日。」

「そうなんです。小野君言ってました?」

「うん。お昼おごりそびれたって言ってたよ。」

「もうお祝いされるような年でもないんで・・・」

「俺より2コも下じゃん。」

「そうですけど・・・橋本さんはいいじゃないですか。」

「何が?」

「頭いいし、仕事もできる、かっこいいし、彼女もいるし・・何でも持ってる。」

「彼女・・・」

話しながら先週の誕生日が最悪だったことを思い出し、暗い気持ちになってきた。同時に神田先輩との夜も思い出してしまい、後悔とは違うが・・居たたまれない気持ちになってきた。
好きでもない人と一夜を過ごしてしまったことは、自分にとって傷だと思う。ただ、あの日、神田さんのおかげで少しだけ忘れることができた。

「じゃあ、また。」

頭を下げて、橋本さんに告げて席のほうへ向かおうとすると、背中に声がかかる。

「野崎さん、約束ね。飲み行こ。」

振り向いて、橋本さんの顔を見ると、仕事の話をしているときのような真面目な顔をしている。何か怒ってるのかな?と思いながら、はい、と頷いてから席に向かった。

< 150 / 228 >

この作品をシェア

pagetop