年上同期の独占愛~ずっと側に
年上の同期
週末、ゆっくり買い物したいから、と橋本さんと午前中のうちに待ち合わせをした。家の側まで車で迎えに来てくれた。意外なことに真っ黒な2ドアのスポーツカーだった。何となく落ち着いた感じのセダンとか乗ってそうなイメージだったので、かなり驚いてしまった。

「この車、橋本さんのですか?」

「そうだけど、何で?」

「何となく・・イメージと違うので、びっくりしました。」

「そう?」

当たり前のように助手席に乗ってしまったけど、彼女からしてみたらいい気はしないだろうと思い、今更だが尋ねてみる。

「今日は山元さんは?」

「出勤してるよ。現場の進捗が遅れててね。週末も稼働するっているから様子見に行くって言ってた。」

「橋本さんは大丈夫なんですか?」

「俺は平気。進捗は気になるけど、ちゃんと月曜日確認する。山元さんに任せてあるから。」

お互いに信頼しているのだろう。しかし、だからと言って私と出かけて大丈夫なのか心配になってくる。

「山元さんが終わるころ、お迎え行ったほうがいいんじゃないですか?」

「お迎え?大丈夫だろ。進捗確認するって言っても現場まで行くわけじゃないと思うから。」

本当に大丈夫かな・・・かなり心配だ。

「今日はどこまで行くんですか?」

「湾岸通って、ショッピングモールまで行こうと思うんだけど、いい?」

「もちろんです。もう見るお店決まってるんですか?」

「大体ね。海の方でお昼食べてもいいかな、と思って。夜は高層の方のレストランって思ってるんだけど、どう?」

「あの・・・夜はって、そんなに遅くまで大丈夫なんですか?」

「え?ははっ。俺は別に大丈夫。門限とかあるわけじゃないし。第一、一人暮らしだし。
あ、野崎さん、門限とかある?何時まで大丈夫?」

「あ、いえ。連絡さえすれば時間が少しくらい遅くても大丈夫です。」

別に門限とかを気にしたわけではなく、私とそんなに遅くまで出歩いていたら、山元さんは嫌がらないのだろうか。

「あのさ、同期なんだし、敬語いらないから。俺も普通にしゃべちゃってるから野崎さんも普通にして。」

確かに最初のことろは敬語で自分のことも「僕」と呼んでいた。だいぶ砕けた口調になってきている気がする。

「でも、年上だし。仕事もご一緒させていただいているので、できればこのままでお願いします。」

「仕事の時も、別に俺は野崎さんの上司ってわけじゃないのに。普通にしてほしいな。」

「・・・」

「じゃあ、せめてプライベートの時だけは普通に話して。この前飲みに行った時も、せっかく二人で飲んでるのに、仕事してるみたいだった。せっかく同期なんだから仲良くしてほしいんだ。」

「じゃあ、すぐには無理かもしてないけど、少しずつ慣れるね。」

「うん。」

嬉しそうに返事をする橋本さんの横顔をチラっとみる。少しだけ笑顔の橋本さんは本当に少し嬉しそうだ。

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