年上同期の独占愛~ずっと側に
「今日一緒に選んでほしいのは、兄貴のところにもうすぐ子供が生まれるんだ。結婚祝いも渡してないから、結婚祝いと出産祝いと両方選びたいんだ。何がいいかな?」

なんと、そっからか。もうお店とか品物は決めてあるのだとばかり思っていた。何にするかから選ぶのか・・・。
出産祝いは何となく選びやすいが、結婚祝いとなると・・・何がいいのかかなり悩む。

「候補とかないんですか?」

「全然思い浮かばない。」

「身に着けるものか、使うものか、飾るものか・・・何か決めないと見に行くお店が決まらないですね。」

「なるほどね。じゃあ、夫婦で何か使えるものがいいかな。」

「そしたら雑貨屋あたりから見てみますか。」

「うん。野崎さん頼りになるね。」

橋本さんのこんな柔らかい表情を見るのは初めてだ。
私が今のプロジェクトに配属された最初の頃は、はっきり言ってちょっと怖かった。少しだけ雑談をするようになり、時間が合えばお昼を一緒に行くようになって、一年たった最近になってようやく笑顔を見せてくれるようになった。
今日の買い物もそうだが、先日一緒に飲みに行ったりするようになるなんて、考えてもみなかった。

たくさんいる同期の中でも、休みの日に約束して会う人なんて、亜都子と・・・あとは林君くらいだった。小野君とだって出かけたことがない。
林君は、同期というより元カレになってしまったが、新入社員のころは仲の良い同期として出かけることが多かった。良い思い出にならなかったのは残念だが仕方がない。

そんなことを考えていると、橋本さんが気遣うように声をかけてきた。

「そろそろ着くけど、疲れた?」

「いえ。すみません、ぼーっとしちゃって。運転ありがとうございます。」

すると、はぁー、と小さくため息を付き苦笑いしながら橋本さんが言ってくる。

「全く敬語治ってないな。次使ったらペナルティな」

「ペ、ペナルティ?」

「嫌だったら普通にしゃべって。」

「・・・わかった・・・。」

ペナルティとは・・何を要求されるのだろう。お兄さんたちの結婚祝いの品物を考えるのも、結構私にとっては大変なことなのだが・・責任重大だ。
< 173 / 228 >

この作品をシェア

pagetop