年上同期の独占愛~ずっと側に
「亜都子さん、お久しぶり。随分たっちゃったけど、いつかはお土産ありがとう。野崎さんからしっかり受け取ったよ。」

「いえ、大したものじゃないし。橋本さん、ご無沙汰してました。お元気ですか?」

「ああ、おかげさまで。尾崎も元気?かなり忙しそうだけど。研究室こもりっきりなんだって?」

「波がありますけどね。最近研究の大詰めらしくって、家には寝に帰ってくるだけです。」

「はは。相変わらずだな。尾崎の様子が目に浮かぶ」

橋本さんが懐かしそうな眼をしながら亜都子と和やかに話をしている。
亜都子は研究で毎日忙しそうにしている尾崎さんのことを、ちゃんと支えて分かり合えてて、本当にすごいと思う。

私にもそんな未来が来るのだろうか、と考えていると、亜都子が私のほうを向いて心配そうに聞いてきた。

「萌々香大丈夫?気分悪い?」

「大丈夫よ。全然飲んでないもの。これ、ノンアルだよ。」

「ならいいけど。萌々香も飲みたい?」

「ん~、飲みたいけど、酔っぱらわない自信がないからな。今週ちょっと疲れてるし」

「私のホテル泊まってもいいよー」

亜都子がわらいながら言うと、横から橋本さんが口を挟んできた。

「俺が送るよ。飲んでいいよ今日は。」

「へぇ~、橋本さん、頼もしいね。面倒なことは嫌いなのかと思ってたけど・・。珍しいですね。」

「何でだよ。野崎さんを送るのは面倒なことじゃないだろ。」

少し不貞腐れてながら言う橋本さんを横目に、亜都子が私に向かって言った。

「萌々香飲みなよ。今日は私も橋本さんもいるから、心置きなく1杯だけね。」

心置きなく、という割に1杯だけなんだ・・。さすがに亜都子は私のことよくわかってる。気分よく飲めるのは恐らく1杯が限界だろう。
亜都子がマスターに細かく要望を伝えて私のカクテルを注文してくれる。
橋本さんも柔らかい表情で亜都子のことを見ながら気分よく飲んでいる。

亜都子はどこにいても変わらない。仕事がどんなにきつくても、理不尽なことがあっても落ち込んだり取り乱したりしない。愚痴を言うとしても、明るくカラッと
「全く嫌になっちゃうよね~」と笑いながら言う程度だ。
誰と接するときもいつも自然体で、相手に気を遣わせない術を知っている。困ったときについ頼りたくなるような存在だ。

私のこと、もしかしたら心の中で呆れているかもしれない。
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