年上同期の独占愛~ずっと側に
母も調子づいて、拗ねた口調で亜都子と返事をする。

「それが、まだなのよ~。萌々香ったらそのうちね、とか言って全然連れてきてくれないの」

「明日ね、旦那にここまで迎えに来て、ってお願いしてるんだけど、橋本さんの車で連れてきてもらうように言おうかな。そうすれば会えるじゃん。」

亜都子が明るい言うが、そんな急に言われても心の準備ができていない。
まあ、挨拶程度に橋本さんを紹介するくらい、深く考えなくても良いのかもしれないが、結婚がダメになったことがあるだけに、軽々しく彼氏を両親に紹介するのも何となく気が引けてしまうのも事実だ。

夕食を食べ、亜都子と順番にお風呂に入った後、私の部屋に布団を並べてゆっくりする。

「赤ちゃん、順調でよかったよ。」

「うん、出産は東京でしようと思ってるんだ。産休と育休も取る予定だから、何か月かはこっちにいる予定。」

「ほんとに?じゃあ、真っ先に赤ちゃんに会いに行く。楽しみだな~」

そう言いながら亜都子のお腹を撫でていると、亜都子は私のほっぺをツンツンと突っつきながら言った。

「お母さん、橋本さんに会いたがってるよ。」

「うん。わかってる。」

「橋本さんは、大丈夫だと思うよ。・・・って林の時も言ったから無責任に聞こえると思うけどさ。」

「ううん。無責任とか、そういう風には思ってないよ。たださ、なんか申し訳なくて」

「ん?」

「彼氏です、って紹介しておいて、また振られました、とかなったらさ、また両親を悲しませるような気がしてね」

「だから、橋本さんは大丈夫だって。」

「うん。わかってる。」

「明日、うちの旦那と来るからね」

「・・・うん。ありがとう。」

今までも、デートの帰りに何度も送ってくれた。そのたびに、挨拶すると言ってくれている橋本さんに、今度ね、とはぐらかしていた。明日、亜都子も尾崎さんも一緒なら何となく心強い。

そろそろ寝よっか、と言って、電気を消したが、亜都子とのおしゃべりは止まらず、結局朝方まで話し込んでしまった。
妊婦の亜都子には負担だっただろう。明日は尾崎さんが車で寝かせておかないと。

翌日、昼前には起きだしてきた亜都子は、顔色もよく、食欲もあるようだった。

「亜都子、ごめん。昨日調子にのって夜更かしさせた。」

「ぜーんぜん。元気だから大丈夫よ。今まで妊娠中のトラブルは一切ないし」

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