年上同期の独占愛~ずっと側に
会議室の鍵を開けて、パソコンのセッティングをしたあと、机を並べ変えていると、会議室のドアが空いた。

「おはようございます」

「おはようございます」

研究部門の橋本さんだ。少し前まで商品開発部門にいたので、このプロジェクトで最も頼れるメンバの一人だ。そして、院卒なので私より年上だが、同期でもある。このプロジェクトに入ってから同期だと知った。私は、技術部門の中でも橋本さんは苦手な人の一人だ。兎に角頭が切れて、納得のいく説明ができないと、言葉少ないながらも強烈な指摘をされる。そして、言い方や例えがとてつもなくエグい。

「机のセッティングやりますので、資料の準備しててください」

随分早いな、と思ったら、会議準備手伝いに来てくれたんだ。

「ありがとうございます。もう準備できているから大丈夫です」

「慣れましたか?」

「あ、はい、まあ、精一杯ですね。」

まさか話しかけられるとは思っておらず、不意に聞かれて驚いてしまい、変な回答になってしまったが、気にする様子もなく、そうですよね、と会話を続けている。

「統括、大変ですよね。」

「早く戦力になれるようにがんばります。」

「野崎さんは、商品の経験は?前職は人事でしたっけ?」

「商品経験は全くなくて。前職は育成と、少しだけ採用を・・」

私は初期配属から人事部の育成担当で、営業も商品開発も、全く経験がない。研修期間のOJTだけだ。

「育成担当か・・・でも、育成やっていたんだったら、各部門の業務内容については詳しいですよね」


育成のカリキュラムを作成するには、それぞれの配属先に準じたプランや研修の策定を実施しなければならないため、各部門の業務内容は熟知する必要がある。ただ、それを聞かれて、はい、詳しいです、と胸を張って言い切れないのが悔しいくらい、橋本さんは詳しい。同期とは思えないくらい、豊富な知識を持っている。

今日の打合せは、商品と開発スキルを持った人員配置の要請だろう。事前にシミュレーションはしていて人事担当も打合せ済みだが、具体的な話を今日詰めることになっている。

「そろそろ時間ですね。橋本さん、準備ありがとうございました。もうお座りになってください。」

声をかけてから、一旦会議室を出て、原さんを呼びに行こうとしたら、原さんの他、ウチのチームのマネージャーの緒方さんと人事部門の二人が歩いてくるのが見えた。

「お疲れ様です。研究と商品には声かけてきましたら大丈夫ですよ。」

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