年上同期の独占愛~ずっと側に
普段は無口なだけに、かなり心配をかけているのだろう。仕事の進捗も気になるに違いない。

「その件は、もう解決しました」

「じゃあ、どうしましたか?何かトラブル?」

「家は、順調に進んでます。地鎮祭ももうすぐですし、仮住まいも落ち着いてきました」

そのまま黙ってしまう私に、視線をそらさず、ずっとみている。相談にのってくれようとしているのがわかる。できれば知られたくない、情けない話なのだが、仕事が手につない私にイライラしているはずだ。プライベートな話で迷惑をかけたくないのだが、根負けして話してしまう。

「結婚して一緒に住もうと思っていた彼と、ダメになってしまって・・・。新しい家には両親と私一人が済むことになります」

「婚約者と別れたんですか?」

「そうなります」

「それは・・・辛いですね。大丈夫ですか?」

原さんはそういうと、パソコンを操作し、

「野崎さんが作成してくれてるファイルは、このフォルダにある今日の日付のものですよね?続きは僕がやるので、野崎さんは思う存分ボーっとしててください。」

思う存分、ぼーっとするって・・・

「泣きたければ泣いててもいいし、ここに居づらければ、席外してもいいですよ。気分転換にコーヒー飲みに行ったりしてください。携帯だけつながるようにしてもらえばいいですから」

「でも・・・」

「ツラいときはお互い様です。プライベートと仕事はきっちり分けてしっかりしろ!っていう人も多いかと思いますが、僕も周りの人に支えてもらい、お世話になりながらやってきています。野崎さんは日頃からしっかりやっていただいていてマネージャーの信頼もあります。まずは、変な方向に行かないように、気持ちを整理してください。野崎さんだけが悪いわけではないので、あまり自分を責めないように」

今日の資料は任せてくれ、と原さんに繰り返し言われて、申し訳なくて、情けなくて、やっと治まりかけた涙がまた溢れてきた。

「ありがとうございます。
 じゃあ、今日は今週締めの経理の処理やっちゃいますね。チーム分全部、できたらやっちゃいます」

「無理しなくていいのに。できる範囲でいいですからね」

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