年上同期の独占愛~ずっと側に
嘘をつかれていたことの口惜しさ、情けなさ、心変わりをされてしまった不甲斐なさ。信じていた人に裏切られた絶望感。彼と彼の相手に対する憎しみと嫌悪感。間違いなく体の関係もあるだろう。想像すると吐きそうになり、食欲も全然ない。何より自分を責めても何も解決しない空虚感が、たまらなくつらい。
元奥さんの及川さんにしても、何カ月もの間家に帰ってこない亮を待ちながら、どんな気持ちで過ごしていたのだろう。

そんなことを考えながら、伝票の打ち込み作業をしていると、ずっしりと体が重くなり、つい手が止まってしまう。
大粒の涙が机の上にポタポタと落ち、嗚咽が漏れてしまう。
ヤバい。原さんに甘やかされているが、今は仕事中だ。わかってはいるのだが、涙が止まらない。

すると、会議室のドアがノックされて、誰かが入ってくる。
慌てて涙を拭きながら立ち上がり、入り口の方へ向かうと、開発部門の橋本さんが入ってくるところだった。

「お疲れ様です」

「・・・お疲れ様です・・・」

涙を見られないように、俯き加減で挨拶をする。

「打合せは終わったんですか?」

長時間会議室を抑えてあるのをみて、打合せだと思うのは当然だろう。

「はい。今終わったのですが、またこのあと原さんと打合せがあるので、ここでそのまま作業していました」

申し訳ないが、原さんの名前を使わせてもらってしまった。

「開発部門の案件がらみだったら、少しお話させてもらおうと思ったのですが・・・」

「今日は機材の搬入スケジュールと人材の配置プランなんです。開発部門の案件は明日以降詰めたいと思ってました。」

「随分ハードですね。機材の搬入だって数十人規模でしょ?今日中にプラン固まりますか?」

「部長には頭出ししてあるので、何とか・・・」

「・・・野崎さん、大変そうですね。大丈夫ですか?」

「・・・・・」

「体調悪そうですけど、大丈夫ですか?」

「・・・大丈夫です。原さんにも分担させてもらっていて、この後打合せなんです」

「そうですか。忙しいところお邪魔してしまってすみません。」

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