年上同期の独占愛~ずっと側に
原さんが私が呼びに行かなくても済むように、声をかけてきてくれたらしい。会議室に戻ると、橋本さんも内線電話で両部門に声をかけてくれていた。

時間ちょうどに打合せが開始になり、研究と商品部門からの人員要望について具体的な話がある。ベンダ部門と連携して、機材の搬入とプログラムが搭載できたマシンから試験は開始し始めているが、もともとの仕様全貌が分かる人間が中々現場に行けないこと、またとプログラムのバグ対応、と商品知識のある人をプラス2名ずつ必要との要望だ。

「ご要望については了解です。2週間時間ください。」

商品開発部門の部長からの説明後、人事課長が回答する。

「ありがたいです。ご検討ください。」

「あくまでも2週間は検討期間で、そこから調整に入ります。統括さんにお願いですが、プロジェクトの進捗状況と研究と商品開発部門の構成図をお願いします。それと、直近の経営会議資料も」

人事課長が矢継ぎ早に告げる内容に、原さんはすかさず了解の返事をする。私も原さんに倣ってわかりました、と返事をするが、プロジェクトの進捗状況はまだ先週依頼ヒアリングできていない部門もあり、それからの資料作成になるので、かなり厳しい。
そんなことを考えていると

「できれば今日中に」

と容赦なく人事課長に言われてしまう。早速原さんと役割分担をしないと、と考えながら会議室を出ようとすると

「野崎さん、直近の部門で共有した進捗状況があるので、後でメールしておきます」

「ありがとうございます」

会釈しながら、お礼を言い、小走りで原さんに追いつく。

「橋本さん、って野崎さんの同期だっけ?」

「そうですね。でも、ここに来て初めて知りました。話したこともなかったです」

「そうなんだ。だけど、橋本さんは野崎さんには随分甘いですね。彼、厳しくて有名だぞ。」

「へえ、そうなんですね。さすがですね。同期の中でも有名みたいです」

橋本さんの噂は何度となく聞いたことがある。
一番仲良くしている同期の亜都子が研修で一緒になったことがあるらしく、今回異動になるときに橋本さんのことを聞いた。研修中でもかなり優秀で、クールで一見冷たそうに見えるが、グループワークの課題をほとんどやってくれたらしい。優秀だし結構頼りになるよ、と亜都子は橋本さんを褒めていたが、私は彼の良さがわかるほど、まだ接していない。

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