年上同期の独占愛~ずっと側に
背が高くて上品で優しくて・・・同期の中でも林君はいつも私に優しかった。何年も前のことだけど、そんなことを思い出しながら林君の横顔をチラチラ見ながら歩いていると、林君も同じことを思っていたのか

「萌々ちゃんとこうやって歩くの、久しぶりだよね。雰囲気変わったって言ったけど、こうやって歩いてると、あの頃とあんまり変わらないな、って気もするな」

「ふふ。そうだね。東京でまた皆で会おう。楽しみにしてる」

ホテルの前つき、じゃあ、こここで、とお礼を言おうとすると、心配だから部屋に入るまで見届ける、としつこく言われ、全然飲んでないし、大丈夫なのに・・・と思いながら、エレベータに乗って部屋の前まで行く。

わざわざ送ってもらったし、部屋でコーヒーでも飲んでく?と言うべきだろうか。と一瞬悩むが、誘ってると思われても林君も困るだろうし、ここでお礼を言って帰ってもらおう。

「今日はどうもありがと。また連絡する。元気でね」

「うん・・・、部屋のキーは?」

手に持ってるカードキーを林君に見せて、じゃあね。
と言って部屋に入ると、林君がドアに手をついて、私を体ごと強引に押して部屋の中に一緒に入ってきた。

めずらしく強引な林君にびっくりして、両手を伸ばして林君を押しやり体を離す。

「林君、酔ってる?気分悪いなら少し休んでから帰ってもいいけど。何か飲み物買ってくるよ」

「萌々ちゃん、今日は一緒にいたい。一緒にいよう。」

部屋についてきたときから、何となく嫌な予感はしていたのだが、まさか林君に限ってという思いのほうが強く、ついここまで連れてきてしまった。
それに、私も林君と別れがたかったのも事実だ。だけど、もう一軒一緒に行きたいかな、くらいに思っていて、まさか一晩一緒に過ごすとか、そんな思いは全くなかった。

それに・・・
『今日は一緒にいたい』・・・今日はってことは、今日だけってこと。
林君にギューギュー抱きしめられて、お酒の勢いもあり、亮のことを忘れられるなら、流されてもいいかも、と一瞬だけ考えてしまう。

林君とは同期の中でも一番信頼していたし、入社後半年たつころには、二人で会うことも増えていて淡い恋愛感情も抱いていた。しかし、それからすぐに本配属になり、二人で会う機会が減ってきて、結局そのままになってしまっていた。その後しばらくして亮と付き合いだした。林君の顔を見ると、以前抱いていた甘い感情を思い出すことがあるが、今すぐ恋愛関係になるわけではない。きっと林君だって私のことが好きというわけではないだろう。
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