年上同期の独占愛~ずっと側に
「そうですか。だったら良かったです。」

亮は意外に慎重というか、、悪く言うとヘタレなところがあるので、仕事が回らなくなるようなヘマはしないはずだ。見境なく職場の女性を口説いたりしないと思っていたのだが、彼女の言っていることが本当だったら周りにも迷惑がかかる。後で弘美にも探りを入れておこう。

「林さん、かわいそうですね。野崎さんの関心は林さんより蝦川さんですか。」

「いえ、あなたが困ってそうだったので、どんな状況なのかと思っただけです。」

「とても困ってますよ。林さんはとても素敵な人なのに、こんな男性を見る目がない方に横取りされるなんて。」

立花さんの声が一段と大きくなり、周りにいた人たちが何事かとチラチラこちらを見始める。私は慌てて周りを見渡すが、知った顔はいないようだ。

「結婚、するはずだった。大阪と東京じゃ思うように会えなくて、寂しかったけど東京に転勤になったら一緒に住む約束してて、部屋だって2人で決めたのに全部アンタが台無しにした。アンタなんか蝦川さんとさっさと結婚すればよかったのよ!」

凄い剣幕でまくし立てられた。彼女が言いたかったことはこれか。しかし今私が何を言っても彼女は聞く耳を持たないだろう。黙ったままの私に立花さんは続けていった。

「そもそも林さんがあなたのこと本当に好きなのかだって怪しいものだわ。小野さんへの当てつけで後に引けなくなったみたいなことも言ってたし。」

「小野さん?小野君のこと?」

小野君がどうして出てくるのだろう。と考えていたその時、私のすぐ後ろで声をかけてきた人がいた。

「野崎さん」

「橋本さん・・・」

「お疲れ様。まだ食事中?」

「いえ、終わってます。」

「だったら、会議資料の件で確認したいことがあるんだけど、今からちょっといいかな。」

「えっと、今、ちょっと・・・」

私が立花さんの方をチラっと見ながら言葉を濁すと、橋本さんが畳みかけるように少し強引に言った。

「少し急ぎなんだ。申し訳ないけど、お願いしたい。」

「わかりました。・・・すみません、仕事があるので行きますね。失礼します。」

立花さんに軽く会釈して席を立った。立花さんは俯いたまま顔を上げない。
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