年上同期の独占愛~ずっと側に
橋本さんはいつからいたのだろう。彼女の話はどこまで聞こえていただろうか。仕事仲間の人に恋愛沙汰のトラブルを見られるなんて最悪だ。ただでさえ、亮と別れた時には同じ担当の原さんたちにかなり助けてもらった。職場でトラブルを起こす女なんて、いらない、と思われても仕方がない。

しかし、正直助かった。あのまま彼女に責められ続けていても、私が何か言えば恐らく逆効果だ。かなり興奮していた様子だし、私への敵意がむき出しだった。

エレベータホールまで着くと、橋本さんの背中に声をかけた。

「すみませんでした。資料、どの部分ですかね。」

「いや。わかりやすい資料で助かったよ。」

ん?じゃあ、さっき確認したいことがあると言っていたのは何だろう?もしかして・・・・助けてくれた?私がポカンとしていると、橋本さんが続けて言った。

「さっきの人、知り合い?」

「いえ。初対面です。」

「揉めてたように見えたけど、大丈夫?」

「・・・私にもよくわかりません・・・けど、みっともないところお見せしてすみません。」

「いや。何かあったら言って。力になれることがあればするから。」

「ありがとうございます。でも大丈夫です。」

言いながら、涙が出そうになった。橋本さんとプライベートな話をするなんて思ってもみなかった。
ホッとしたからか、今になって悲しみと悔しさと、色んな感情が込み上げてきた。
初対面の、恐らく年下であろう人に亮のことをとやかく言われ、バカだの頭が弱いなど、散々な言われようだった。立花さんは林さんのことで私に敵意を持っていたが、亮との関係を元々知っていたのか、それとも林さんとのことがあってから知ったのかわからないが、とにかく私を攻撃する材料だったのだろう。
私も突然のことで冷静さを失っていて、何も言い返すことができなかった。普段の私だったらやられっぱなし、なんてことはなかったはずだ。

エレベータが到着すると、橋本さんが私を先に出るように促して、一緒にオフィスに向かおうとするが、私は涙を見られないように下を俯いたまま、逆の方向へ体を向けた。

「お手洗い寄ってから戻ります。」

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