裏切り
翼side
今日は、千亜季さんが
今、手掛けてる現場を
見せてもらう約束で
彼女との待ち合わせ場所に向かう
ガーデンプランナーが
どんなことをするのか
どんなものを作りあげていくのか
とても楽しみだった。
それに俺は、千亜季さんに
ひかれている。
彼女の容姿は元より
優しさの中にある強さや
責任感の強さ
自分の仕事に対して
誇りを持って取り組んでいる所に
その全てが彼女を輝かせていた。
そんな彼女と少しでも
繋がっていたくて
人との接触が苦手な
俺がラインをしたり
電話をしたり
彼女と少しでも
一緒に過ごしたくて
食事や飲み会に誘ったりもした。
そんな自分に
俺自身が驚きを感じている。
ニコニコと微笑みながら
少し先から歩いて来る彼女に
俺の心臓は、ドクドクと高鳴る。
彼女との会話は
楽しくて·····
同じものを見て笑ったり。
感動したり
梓の時には、こんな風に
感じた事は一度もなかった。
千亜季さんの仕事場につく
やはり······
彼女の手掛けるもの
作り上げるものは、
素晴らしく、言葉に表す事も
難しいくらい······
俺は、その素晴らしさに
見いってしまっていた。
そんなときに、現場にいた方から
声をかけられた。
彼氏か?との問いに
彼女は、すかさず
違う、と答えた。
彼女にとって俺はその対象には
なり得ないのか
と、落胆してしまう
男として、小さいなぁ
だから、俺なんかが
彼氏と間違われて
申し訳ないと
この場を早く離れなければ
と、行こうと伝えた·····が·····
彼女の足音が聞こえて来なくて
えっ、と振り向くと
彼女は、腕を組んだまま
さっきまでいた場所に
佇んでこちらを見ていた
慌てて彼女の元に戻ると
やや、怒り?
やや、呆れ?
ながら、一人で帰るように言って
彼女は、真逆に歩き始めた。
俺は、そんな千亜季さんを
唖然と見ていた····が·······
千亜季さんの腕を掴み
「千亜季さん、どうしたの?」
と、訊ねるが彼女は何も言わない
でも、掴んだ腕は外されず
その事に、少しホッとしながら
「俺、何か気にさわる事言った?
それとも、本当は、何か用事があった?」
と、訊ねても何も答えない
「千亜季さん?········」
どうしたら、良いのだろう?
彼女と千亜季さんと
このままとかあり得ない
と、考えていると·········
肩振るわせる千亜季さんに
「千亜季さん?」
「くすくすっ、ごめんなさい。」
と、笑う彼女に心底ホッとして
「·······良かっ····た····」
と、言うと
「あっ、でも、
私、怒ってるのですよ。」
「ん?」
「だって、言葉を途中で止められると
いやじゃないですか?
何か、気に入らないなら
言って貰わないとわからないし
現場監督がいたのが
嫌だったなら、ごめんなさい。
誰もいないと、思っていたから。」
と、困ったような
少しだけ、ムッとしたような
顔をして言う千亜季さんに。
「あっ、すみ··ごめん。
現場監督さんがいた事は、
なんとも思ってないよ。
逆に千亜季さんの事を
誉めて貰えて嬉しかった。
ただ···っ、ふぅ~っ
ただ、俺では、千亜季さんの
恋愛対象には、なれないんだと
思って···しまい····
あ~、ご···めん····」
と、言うと
千亜季さんは、
驚いた顔を一瞬したが
顔を赤らめて
「あっ、いえ、そんなつもりで
言ったんじゃなくて
そんな風に誤解されると
あなたが···進藤さんが
嫌なんでは·····と····思って····」
「そっ、そんなことない。
嫌だなんて、絶対ない。」
力説する俺に
千亜季さんは、困った顔をしながら
笑いだしてしまい
俺も笑ってしまった。