裏切り

車で梓と産婦人科に向かう。
「翼君、ごめんなさい。」
「あいつには?」
「言ってない。
と、いうか、翼君が出ていってから
会ってないし
話してもない。」
「なんで?好きだったんだろ?」
「なんでか·····わからない。」

病院に着いて
診察が始まる。

しばらくすると
俺も診察室に呼ばれた。
先生からは
「貴方は、元のご主人と
お聞きしましたが
間違いないですか?」
「はい、間違いありません。」
「お腹の赤ちゃんは、
貴方との間に出来たわけではない、と。」
本当の事を言ったら
梓が浮気をしたとわかるし····
と、考えていると
「はい、つば、進藤さんとの間の
子供ではありません。」
と、梓が答えた。
「そうですか?
では、離婚をしてどのくらい
ですか?」
「三ヶ月を過ぎました。」
と、俺が答えると
先生は、難しい顔をして
「お相手の方は、このことを?」
と、聞かれて俺が梓をみると
梓は、首を横にふっていた。
先生は、うーんっと····
「先生、何かあるのでしょうか?」
と、俺が訊ねると
「実は、離婚して300日たっていないと
貴方の子供でなくても
貴方の息子となり
戸籍にも掲載されるのです。」
**(半年と記載しましたが、300日でした。
申し訳ありません。)**
先生の言葉に
俺も梓も、唖然とした。

それから先生は
赤ちゃんは順調です。
と、エコー写真も見せてくれて
今後どうされるか
赤ちゃんのお父さんと
話して決めてください。

堕胎をされるのでしたら
一日も早い方が良いです。
産む事を決断されましたら
次回、母子手帳を
貰って来てください。」
と、言われた。

梓の代わりに会計をして
謝り続ける梓を連れて
駐車場に向かう。

途中、
暑さからか
立ちくらみか
本当に体調が悪いらしく
ふらふらと倒れそうになり
慌てて支えていると
「つ··ばさ··くん··ごめん···ね···」
と、言いながら意識を失う
一旦車に乗せて
吉田さんに連絡をした。

吉田さんは、直ぐに
マンションに帰れないけど
部屋に入って待って貰えないか
と、言った。

吉田さんも仕事あるし
困るだろうと
梓を抱き上げて
部屋に運び入れた。

朝、救急車に乗るとき
鍵、ここに入れとくね
と、吉田さんが梓に
言っていたから
直ぐに中に入れた。

部屋は2DKかな?
2部屋あったから
何にもない部屋のベッドに
梓を寝かせた。

顔色が悪いが
眠ったようで安心した。

落ち着いた所て
千亜季に連絡をする。

彼女は、待ち合わせ場所に
行たはずだ。
本当に申し訳ないことをした。
彼女は、あれから
どうしただろうか······

だが、何度もコールを
するが····
千亜季が電話に出ることはなかった。

仕事かな?
と、ラインもメールもしてみる

そこに吉田さんが
戻ってきて
病院での話をした。

吉田さんは、
自分が飲みに誘わなかったら
俺達が離婚することは
なかったと言って詫びていたが
遅かれ早かれ
こうなっていたと思うと
俺は伝えた。
だが、吉田さんは、
気にしているようだった。

梓は、俺より大切で
好きな人ができたのは確かだし

俺も、この人となら
もう一度····と思える人が出来た
と、伝えると

吉田さんは、
少しだけ、ホッとした顔をした。

後は、吉田さんに任せて
帰宅をした。

俺の子ではないのに
俺の籍にはいるのか
良くわからないから
奥菜先生に訊ねてみよう。

それにしても
千亜季から
折り返しの電話もないし
メールもなく
ラインは既読にも
ならなかった。


この日、千亜季が
俺と梓を見ていた····とは
知らなかった。
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