裏切り
仕事が終わり
奥菜先生の事務所へ
先生は、忙しそうにしていて
俺が、先生の部屋に入ると
「ちょっと待って下さい。」
と、言いながら
俺にソファーへ座るよう進めてくれた。
少しすると
「お待たせしました。
急にお呼び立てしまして
申し訳ありません。」
「いえ、あの?
奥菜先生、千亜季さんに
何かあったのでしょうか?」
「進藤さんは、
どうして、そのように
思われるのですか?」
と、言われて
俺は、千亜季との出会いから
今までのことを話した。
自分の気持ちも含めて·······
それから・・・
土曜日にデートの約束を
していたのですが·······
俺は、吉田さんから電話が
あった所から話をした。
先生は、黙って話を最後まで
聞いてくれた。
最後に俺が先生に
訊きたかった事も伝えた。
先生は、
「弁護士としてお話ししますと
翼さんのお子さんでないことは
明白ですから
【親子関係不存在確認】を
家庭裁判所に調停を申し立てを
して申し立てが認められたら
赤ちゃんは、母親の籍に入ります。」
(平成19年から他の方法もあるとか)
と、言って貰えて
ホッとした····つかの間····
「そちらは、私がお引き受けします。」
と、言ってくれてから
先生は、俺の顔をまっすぐ見て
「ここからは、
千亜季の叔父として話します。
翼さんが、千亜季に内容を
話さずに倒れた元の奥さまの
所に向かったことの経緯はわかりました。
元の奥さまとご友人も
困っていたでしょうから。
だが、あなたが産婦人科から
元奥様を支えて出てきたのを
千亜季は、見ていたのです。」
と、言われ
驚きで声が出なかった
それで、電話もラインもメールさえも
繋がらないんだ·····
何も知らない千亜季は、
俺を·····疑っているのだろうか?
そんな·····
先生に、本当に
先生に誓って梓とは
そんな関係は別れる前から
ずっとないことを伝えた。
先生も、それはわかっていると
言ってくれた。
千亜季にもそう話した事を
教えてくれて····
「千亜季は、かなりショックだった
みたいで泣いて、泣いてね
姉が、虫の知らせか
千亜季に連絡するも繋がらずに
俺に行ってきてと頼んできて
行ってみると
かなり泣いて憔悴している
上にまた、泣き始めて
目蓋は開かなくなっていたよ。
俺は、翼さんの事は
俺に任せろと言ったんだ。
だが·····千亜季は······
元奥さんを支えていた時の
あなたの顔が頭から離れないと
せっかく冷やしているのに
タオルの下から涙を流すんだ。
なぁ、翼さん?
あんたは、その時
どんな顔をしていたんだろうな?
あまり表情を出す人ではないと
自分で言われるあなたが·····
千亜季は、あいつの浮気を
知って離婚するときも
あんな風に泣かなかったんだ。
あなたからの着信もラインも
メールも何もみてないよ
電源を落としていて。
怯えるから俺が電源を入れて
あなたからの連絡は拒否して
全て削除しました。
すみません。」
先生の千亜季に対しての心配な顔と
俺に対しての申し訳なさそうな顔を
見ると気持ちがわかるだけに
言葉にならなかった。
俺の軽率な行動で
千亜季を傷つけて
俺に対しての信頼も
失った····としか····思え···ない···
先生は、
「正直に答えて欲しい。」
そういうと
再び俺の目を見て
「進藤さんは、姪の千亜季を
裏切らず、一生愛し抜けますか?」
と、言われ
俺は、躊躇なく
「はい。今までこんな気持ちに
なったことは一度もありません。
それほどに千亜季さんを
愛しています。
彼女が俺と一緒にいてくれるなら
俺は、何もいりません。」
と、伝えると
先生は、ふっと笑ってくれて
「ありがとうございます。
千亜季にそう伝えてあげて
下さい。
元奥さんについては
早急に動きますから
それが決まり次第
千亜季に会える様に私がします。」
と、言ってもらえて
「それまでは·····会えないのですね。」
と、言うと
「あはは、翼さんが、そんな顔を
するなんて····。
早く会えるようにしますね」
と、言われてしまい
恥ずかしかった。
それから俺は、
何も知らない梓の彼氏に合い
話をして二度と
梓に関わらないようにします。
と、先生に伝えた。
先生は、何かあったら
いつでも相談にのるから
と、言ってくれて
俺は、先生の事務所を後にした。