裏切り
緊張しながら
指定された店につく。
店に入ると
先生から話が入っているのか
おかみさんが案内してくれた。
個室だ·····
襖を開けると
先生が見えた·····その横に···千亜季·····
痩せている。
元々、スマートだが
一目で、わかるほどに·····
おかみさんが、ごゆっくりと
襖をしめると
俺は、そのまま俯いている
千亜季のそばに行き
千亜季をそっと抱きしめ
「ごめん、本当にごめん。
俺が軽率だったばかりに
千亜季を傷つけて
本当にごめん。
こんなに痩せてしまって·····
こんな風にするつもりなんて
なかったんだ。
本当に千亜季とのデート楽しみで
今日は、どんな風に話そう
千亜季は、どんな顔をしてくれるかな
とか、考えてウキウキしていたんだ。
こんなことなら、
電話にでなければ良かった······」
と、言うと
俺に、いきなり抱きしめられて
身体に力が入っていた
千亜季だったが
顔をあげ俺を見て
「そんなっ、そんなことない。
翼さんがいたから
彼女も彼女のお友達も
助かったんだよ。
わたっ···私が勝手に傷ついただけ」
と、言うから俺は、
首を何度も横にふって
「俺にとって一番大切なのは
千亜季で、千亜季は、俺にとって
唯一無二なんだ。
それ以外に誰になんと
言われようが、
思われようがかまわない
だけど、それで千亜季に嫌われたら、
何にもならない。」
と、項垂れると
今まで黙って見ていた
先生が、
「千亜季、もういいだろう?
翼さんは、お前を失ったら
生きた屍になりかねん。
お前も素直になれ。
失って気づいても
遅いんだぞ」
と、言ってくれて
「わっ、わかってるモン···。
翼さん、沢山心配かけて
ごめんなさい。
あの時、翼さんが
私ではない女性を
とっても大切そうな顔して
抱きしめていた
それが····たまらなく···悲しかったの····」
「大切とか思っていない。
ただ、何かあったら
お腹の子供が、
可哀想だと···思った····だけ。
お腹の子供には、罪はないから。」
「翼さん、こいつは
結婚していた旦那の浮気現場をみても
離婚にいたっても
こんな風には、ならなかった。
どうか、千亜季の事を
今まで通り愛して欲しい」
と、奥菜先生こと千亜季の叔父
哲也さんは、言ってくれた。
だから俺は
「はい。
先生っ、嫌、
千亜季の叔父である哲也さん。
俺こんな風に
誰かを愛しく思ったことないです。
これから先も
千亜季以外ありえない。
離婚歴のある俺ですが
千亜季とこの先もずっと
一緒にいることを
許して下さい。」
と、一度、千亜季から離れて
哲也さんに頭を下げた。
千亜季は、ええっ、と騒いでいたが
哲也さんは、笑いながら
「それは、千亜季の母、
俺の姉に言ってくれ。
だが、翼さん。
俺は、翼さんと親戚になれて
嬉しいよ。」
哲也·····さん·····と俺が感動していると
「あのね、翼さんも叔父さんも
私達は、まだ、お付き合いも
してないのですからね」
と、言う千亜季の瞳には
涙が沢山たまっていて
顔は、優しい顔をしていた。
俺は、千亜季を抱きしめて
「千亜季、どうして良いのか
わからないぐらい、千亜季が好きだ。
俺と結婚を前提に付き合って
下さい。」
と、伝えると
「いいの?こんな意気地無しで
可愛げのない私で。」
「いいも、なにも、
俺が、千亜季じゃないとダメなんだ。
俺こそ、表情も乏しい男だけど
ちゃんと表情も出す
それでも表情が乏しい時は
言葉にして伝える。」
と、言うと
千亜季は、涙をポロポロ流しながら
「いまの翼さんで十分だよ。
でも、ずっと何でも話せる二人でいたいね。
私の方こそ、宜しくお願いします。」
と、言われて
「ほんと?ほんとに?
嫌、先生?いやっ、哲也さん
聞きました?やったー!!!」
と、喜ぶ俺に
千亜季は、泣き笑いをして
哲也さんは呆れながら
「良かったね、翼さん」
と、言ってくれた。
その後、店で哲也さんと
別れて、俺は、千亜季を送る。
手をしっかり繋いで。
哲也さんに沢山お礼をいうと
哲也さんに、
「もうやめてくれ」
と、言われてしまった。
「千亜季、俺、嬉し過ぎて
今日、眠れない。」
と、言うと千亜季は、笑いながら
「うふふっ
私も翼さんが、好き」
と、千亜季の口から·····
嬉しさのあまり·····立ち止まる···
千亜季が不思議に思ってか
振り向き、びっくりしていたから
千亜季を抱き締めて
「俺も、俺も千亜季が好きだ。
大好きだ。」
と、伝えると
千亜季の腕が俺の背中に回る。
少しだけ、この余韻に浸り
千亜季の唇に触れるだけの
キスをした。
帰したくないが
今からは、沢山時間はある。
と、自分に言い聞かせて
千亜季をマンションに送り届けた。